
「没入しすぎて帰ってこない」をいかに防ぐか
入山:なるほどね。逆に視力を向上するためにVRを使えるかもしれないんですね。とはいえ、深く没入しすぎるといろいろと問題はありそうです。実際にガイドラインで何歳以下は使用しないようにという規定を設けているケースもあります。そういう制限は設けるべきだと思いますか。
長島:私は使いたければ使えばいいと思います。使いすぎない工夫はした方がいいかもしれませんが、使う機会を奪うべきではない。あんまり動きの激しいものはお勧めしませんけど。気持ち悪くなったり“VR酔い”したりということもありますから。今回、お2人に体験いただいたシナモンの「NEUTRANS」は酔わない。こういうものから入るのであれば、全く問題ないと思います。
安田:僕が小さい時、ゲームの名人が言っていましたよ。「ゲームは1日1時間まで」って。「ゲームをやるな」とか「買うな」というのではなく、「時間と節度を守ってやりましょう」ということです。それと同じですね。
あまりにもお子さんが没入しきって、「学校に行きたくない」となっちゃったら別ですけれど。
長島:そういう時は親がVRの世界に迎えに行って、連れて帰ってきてあげる。

ローランド・ベルガー代表取締役社長
工学博士
早稲田大学理工学研究科博士課程修了後、早稲田大学理工学部助手、各務記念材料技術研究所助手を経て、ローランド・ベルガーに参画。自動車、石油、化学、エネルギーなどの業界を中心として、R&D戦略、営業・マーケティング戦略、ロジスティクス戦略、事業・組織戦略など数多くのプロジェクトを手掛ける。著書に『AI現場力 「和ノベーション」で圧倒的に強くなる』(日本経済新聞出版社)、『日本型インダストリー4.0』(日本経済新聞出版社)などがある。
安田:そうか。怒る時もVRの中に入って「ダメだよ」って怒ればいいんですね。それで親もはまっちゃったりして……。ミイラ取りがミイラにならないように気をつけないといけないですが。
かつて3Dアバターが仮想世界で暮らす「セカンドライフ」というゲームがありましたよね。一時ブームになったけれど、その後、ガクッとユーザーが減ってしまった。これから、VRが同じような腰砕けにならないようにするには何が必要なのでしょうか。
武樋:「セカンドライフ」の場合は、プロモーションの問題とか、ユーザーが飽きてしまったとかいろいろ問題があったのかなと思います。技術的に少し早すぎた部分もありました。
VRに関しては、今後もちゃんとしたものをちゃんと出していくということが大事でしょうね。もともとVRってギークなおもちゃで、好きな人だけが使うものでしたが、技術の革新とともに、どんどん広がってきたという面があります。
今はまだ黎明(れいめい)期ですが、これからさらに普及が進めばいろいろな問題が出てくると思います。事故が起きることもあるかもしれない。さっきの話に出てきたように、VRの世界に没入しすぎて帰ってこないとか、引きこもりになってしまうとか……。今から安全面、制度面にきちんと取り組んでいくことが必要だと思います。