各業界をよく知る第一線のゲストに話を聞きながら、今後、その業界がどう変わっていくかを探る連載「入山章栄・安田洋祐の業界未来図鑑」。第2回シリーズ(File 2)ではVR(仮想現実)の活用に力を入れている独コンサルティング会社、ローランド・ベルガー日本法人の長島聡社長と、複数人が同時に接続できるVR空間を開発・提供するスタートアップ企業、シナモン代表取締役の武樋恒氏をゲストに招き、VRについての議論を展開中。
VRシリーズ3回目、今回の議題は「VR業界の未来」。AR(拡張現実)・VR関連市場は2022年に1223億ドルを超えるという予想もある。どの業界でどのような活用が進むのか。「バーチャル研修」から「バーチャル試着」、「バーチャル握手会」まで……。これまでの価値観を一変させるような、多様な使い方が語られた。
(取材・編集=小林佳代、動画・写真=寺尾豊)
安田:前回までの議論で、VR(仮想現実)が現状、どのように使われているか、何に使われ始めているかというお話をお聞きしました。ここからはVRの将来についてお聞きしたいと思います。今はまだ見えていないけれど、こんな分野に役立つんじゃないかとか、こんな使い方があるんじゃないかといったところを大胆に語っていただこうと。
入山:ええ。この連載、なんといっても「業界未来図鑑」というタイトルですので。少しぶっ飛んで先の話をお願いします。
安田:読者の方からの質問を紹介します。上智大学の芹田さんから「VRは今後どのような分野でどういう風に使われると思いますか?」という質問が来ています。
入山:既にご紹介したデータですが、IDCジャパンの予想では、2022年には世界でAR(拡張現実)・VR関連市場は1223億ドルを超えるだろうと。中でも流通・サービス市場は419億ドル、製造・資源市場は254億ドル、その次に消費者市場で242億ドルといった予想になっています。面白いのは公的セクターで208億ドルになるだろうということです。
安田:2017年は13億円ですからものすごい伸びですね。
入山:日本国内では消費者市場が12億ドル。流通・サービスが10億ドル、製造・資源が9億ドルという予想ですね。公的セクターは1億ドル。少ないです。
この辺りの予想はどのようにご覧になりますか。
長島:国内市場でいうと、消費者市場とか流通・サービス市場というのは、VRによる新たな刺激で購買を喚起するという形で活用されるものだろうと思います。製造・資源というのはおそらく学習のニーズが多くなるということでしょう。学習のスピードを加速させるためにVRを活用すると見込んでいるのだと思います。

ローランド・ベルガー代表取締役社長
工学博士
早稲田大学理工学研究科博士課程修了後、早稲田大学理工学部助手、各務記念材料技術研究所助手を経て、ローランド・ベルガーに参画。自動車、石油、化学、エネルギーなどの業界を中心として、R&D戦略、営業・マーケティング戦略、ロジスティクス戦略、事業・組織戦略など数多くのプロジェクトを手掛ける。著書に『AI現場力 「和ノベーション」で圧倒的に強くなる』(日本経済新聞出版社)、『日本型インダストリー4.0』(日本経済新聞出版社)などがある。