「あの業界、今、どうなの?」「競争環境が厳しくなるけれど、今後は大丈夫なの?」――。就活中の大学生やビジネスパーソン、経営者にとって、未知の業界の内情は大きな関心事だ。そこで、日経ビジネスが動画・ウェブ・本誌多面展開で立ち上げたのが「入山・安田の業界未来図鑑」。
経営学者の入山章栄氏と経済学者の安田洋祐氏が、それぞれの業界の関係者や業界をよく知るゲストを招き、都合のいい話も都合の悪い話も、ざっくばらんに議論し尽くす。読者からのコメントも積極的に取り入れ、業界を深掘りしていく。
第2回シリーズ(File 2)で取り上げるのは、VR(仮想現実)業界。ゲームなどエンターテインメント領域で先行して活用が進んできたVRだが、現在、ビジネスなど他の幅広い領域でも徐々に浸透しつつある。リアルな体験を可能にするVRはビジネスを、社会をどう変革するのか。入山氏と安田氏がVR業界に詳しいゲストとともに熱く語り合う。
今回のゲストは、VR機器をほぼすべて揃え、社内会議に活用している欧州最大級のコンサルティングファーム、ローランド・ベルガー日本法人の長島聡社長と、VRの会議システムを開発提供するスタートアップ、シナモンの武樋恒代表取締役。気鋭の学者2人は、ゲストとともにVR空間を体験、同じ部屋にそろいながら、あえてVR空間にアバターで集うというシュールな展開に……。てんやわんやの体験の末に、VRがビジネスにもたらす価値の本質を見定めた。
(取材・構成=小林佳代)
入山:さあ、では「入山・安田の業界未来図鑑」第2回シリーズを始めましょう。
この連載は、経済学者の安田さん、経営学者の僕が各業界で働く第一線の方にお話を伺い、今後、その業界の現状と未来について我々なりの考えを整理していこうというものです。「日経ビジネス」とユーザー参加型メディアの「Raise」を活用し、テキストと動画のどちらも楽しんでいただきます。
第1回シリーズでは外資系コンサルティングファームを取り上げました。公開直後から我々の予想を上回る大きな反響をいただきましたね。
安田:ええ、本当にそうですね。読者の方からもたくさんコメントがついて。しかも、そのコメントに、ほかの読者の方が答えてくださったり……。
入山:そうなんですよ。僕たち、コンサルではないので分からないこともあるのですが、その分野の専門家の方が読者の質問に答えてくださるケースもありました。早くも、すごく良いコミュニティーができつつあると感じています。
そして第2回シリーズの今回、私たちがどこにお邪魔しているかというと……。
安田:東京・六本木のローランド・ベルガーのオフィスに伺っています。
入山:第1回シリーズでは、米国のトップコンサルファームであるボストンコンサルティンググループに行きました。そして今回は欧州のトップコンサルファームであるローランド・ベルガー。
安田:入山さん、どんだけコンサルが好きなんだっていう……(笑)。
でも、今回取り上げるのは、コンサル業界ではなく、VR(仮想現実)業界なんですよね。
入山:そうなんです。今回はバーチャルリアリティ業界をテーマとしています。コンサル業界からVR業界。大転換です。まさに未来の業界ですね。で、VR業界を取り上げるのに、僕たちがなぜローランド・ベルガーにいるのかっていうと……。
安田:入山さんがコンサルを好きすぎるから……ではなく(笑)。
入山:ちがう、ちがう(笑)。
安田:のちほど詳しくお話しいただきたいと思いますが、ローランド・ベルガーがコンサルティングの中でVRを積極的に活用しているからですね。
入山:そう。VRに関していろんな仕掛けを試しているのがローランド・ベルガーということで代表取締役社長の長島聡さんにご登場いただきました。
安田: そして、もう1人のゲストは、VRシステムの開発に取り組むベンチャー企業、シナモン代表取締役の武樋恒さんです。今日はよろしくお願いします。
長島・武樋:よろしくお願いします。