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「eスポーツ」は将棋と似ている!?

安田:もともとは娯楽だったものにプロが誕生し職業に変えていくということでいうと、日本には将棋や囲碁という成功事例がありますね。これがチェスになると、職業にして食べている人はいなくて、みんなアマチュアですけれど。

入山:ああ、チェスにはプロはいないんですね。

安田:「グランドマスター」という称号はありますけれど、みんなアマチュアです。本業は別にあってチェスがめちゃくちゃうまいというだけ。

入山:それを考えると、日本の将棋連盟ってすごいね。

安田:そうです。将棋も囲碁も、元をたどればただのボードゲームなわけですけれど、奨励会をつくってプロ棋士を養成している。そこに人生を懸ける人がいて、熱烈に応援するファンもいて、スポンサーも付いてという構図ですね。プロでタイトルを取れば数千万という賞金が得られる。こういう将棋や囲碁と同様のことが、これからゲームの世界でも起きてくるかもしれない。実は日本にはそういう土壌があるのかもしれない。

入山:なるほど。面白いですね。

安田:最近、任天堂元社長の岩田聡さんの言葉を集めた『岩田さん』という本を読んだんですが、岩田さんは「面白いゲームというのは自分でプレイするだけじゃなく、見ていても面白いゲームなんだ」ということをおっしゃっています。

 それで言うと、面白いゲームがどんどん生まれれば、eスポーツ市場も拡大するし、ゲーム業界はさらに発展する。そういう意味では良質な面白いゲームがどんどん増えていってほしいですし、そこにバンダイナムコさんはじめ日本のメーカーの方がどんどん入って世界に発信していただきたいなと思いました。

入山:皆さん、安田さんが熱くしゃべっているのが分かりますよね。実は彼、ゲーマーでゲームにものすごく詳しい。休憩時間には異常なオタク知識を披露していたんです(笑)。今回はMCというより、パネリストとして熱く語っています。

安田:ええ、そうなんです。最後に、せっかくここに○×棒があるので……。

入山:ああ、そうだ。やりましょうか。ひとつ○×。じゃあ、何か問題出してください。

安田:日本のゲーム業界は明るいかどうか、○か×かで答えていただきましょう。明るいと思ったら○、課題が多いと思ったら×ということで。

入山:そうね。プラットフォーマーにやられちゃうかもとか、規制が厳しくて…っていうので×か、いやいや、そんなことないと○か。

安田:4人いっせいに出しましょう。いいですか。では、せーの!

入山:お、全員○だ。

安田:きれいにそろいました。

入山:うん、やっぱり○ですよね。だって、ゲームメーカーはいろいろ新しい取り組みをしているということが分かったし、一方で課題に対してはきちんとした団体が取り組んで、それなりにコントロールをしているということも分かったし。金野さんがお話ししていたように、「ゲーム『を』遊ぶ」のではなく、「ゲーム『で』遊ぶ」ということで、境界が溶け出し、いろいろな領域が融合して新しいことができるようになっている。

 そして、齊藤さんがおっしゃったように、日本のゲームメーカーはIP、キャラクターやコンテンツをいっぱい持っています。そういうものをどんどん使っていけるのですから、大チャンスですよね。

安田:入山さんも強調されている経営学の理論で、「両利きの経営」というのがありますね。成功した企業が次のイノベーションを起こすためには、今、業績のあがっているコア事業を「深化」させるだけでなく、新しい事業を「探索」するという二兎(にと)を追うことが重要だという……。

入山:そうですね、はい。

安田:日本のゲームメーカーにはこれまでに培ってきた強みがある。IPであったり、既存の人気シリーズであったり。それらを深掘りするとともに、新しい事業を探索することができれば、明るい未来が描けると思いました。

入山:どうもありがとうございました。

金野齊藤:ありがとうございました。

(写真:陶山 勉)

金野 徹(こんの・とおる)
バンダイナムコエンターテインメント取締役NE事業部担当兼NE事業部長 1995年バンダイ入社。バンダイナムコエンターテインメントNE事業部マーケティングディビジョンディビジョンマネージャーなどを経て2018年4月から現職。

齊藤昌幸(さいとう・まさゆき)
みずほ銀行産業調査部調査役 2010年にみずほ銀行入行。みずほ証券アドバイザリー第六部、みずほ銀行東京法人営業部などを経て、2019年から現職。ゲームのほか、アニメなどのコンテンツ産業や広告などのメディア業界を担当する。

入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール教授 1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大経営大学院で博士号取得(Ph.D.)。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授などを経て2019年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP)などがある。

安田洋祐(やすだ・ようすけ)
大阪大学経済学部准教授 2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経済学博士号取得(Ph.D.)。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『経済学で出る数学:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。