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 「あの業界、今、どうなの?」「競争環境が厳しくなるけれど、今後は大丈夫なの?」――。就活中の大学生やビジネスパーソン、経営者にとって、未知の業界の内情は大きな関心事だ。

 連載「入山章栄・安田洋祐の業界未来図鑑」では、経営学者の入山章栄氏と経済学者の安田洋祐氏が、それぞれの業界の関係者や業界をよく知るゲストを招き、都合のいい話も都合の悪い話も、ざっくばらんに議論し尽くす。読者からのコメントも積極的に取り入れ、業界を深掘りしていく。テキストによる記事に加えて、音声でも情報を提供。現場で繰り広げられる熱のこもった議論をリアルに味わえる仕掛けとする。

 最後のセッションのテーマはゲーム業界の未来。教育、健康などの分野でゲームが役割を果たす可能性があるほか、新たなデバイスとの組み合わせで画期的な遊び方が広がることが期待される。一方で、ゲーム市場成長のけん引役と考えられる「eスポーツ」はプロライセンスや規制の問題なども絡んでいる。果たして、日本のゲーム業界の未来は明るいのか、明るくないのか。MCとゲスト2人が出した答えとは。

(取材・編集=小林佳代)



入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授(以下、入山):「入山章栄・安田洋祐の業界未来図鑑」、今回はゲーム業界を取り上げています。バンダイナムコの未来研究所にお伺いして、バンダイナムコエンターテインメント取締役の金野徹さん、みずほ銀行産業調査部調査役の齊藤昌幸さんと議論を進めています。

入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール教授 1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大経営大学院で博士号取得(Ph.D.)。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授などを経て2019年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP)などがある。(写真:陶山 勉)

 最後のセッションの今回は、ゲームの未来について語り合っていきたいと思います。これからどんなゲームが出てくるのか。どんな技術が出てくるのか。最初のセッションで、金野さんが「ゲームの境界線が溶けて、これからいろいろな領域と融合していく」という話をされていました。その辺りも詳しくお伺いしてみたいと思います。

 前回のセッションの最後に安田さんから、ゲームビジネスの新しい仕組みを経済学でも解説できるという話が出ていました。改めて、説明してもらえますか。

安田洋祐・大阪大学経済学部准教授(以下、安田)::サービスの形が限定されていると、そこでの課金方法は限られます。1種類のアプリしかなければ、それを「いくらで売るか」という戦略しか企業は考えることができない。ところが課金の仕方やコンテンツの見せ方が多様化すると、ヘビーユーザーか、ライトユーザーかで値段を変えて売ることができます。これを経済学では「価格差別」と呼んでいます。これが、企業目線で見た時の大きな違いになっています。

安田洋祐(やすだ・ようすけ)
大阪大学経済学部准教授 2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経済学博士号取得(Ph.D.)。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『経済学で出る数学:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。(写真:陶山 勉)

入山:新しい技術や仕組みによって、できることが広がったということですよね。この辺、読者の方からもいろいろな意見や質問が来ています。「せきさん」さんから、僕もすごく関心があるところなんですけれど、「ゲームが娯楽だけでなく、教育分野でも大きな役割を果たすだろう」と。「一言主」さんは80代の方だそうですが、「ボケ防止と暇つぶしに昔のゲームソフトを楽しんでいる」と書いてくださっています。

 もしかしたらゲームは認知症予防などの健康分野にも活用できるのかもしれません。「eスポーツ」も大いに注目されています。こうしたゲームの派生をどう考えているか。まず、金野さんからお伺いできますか。