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 各業界をよく知る第一線のゲストに話を聞きながら、今後、その業界がどう変わっていくかを探る新連載「入山・安田の業界未来図鑑」。3回にわたり公開してきたFile 1の議論では、ボストンコンサルティンググループ(BCG)前日本代表の御立尚資氏、マッキンゼー・アンド・カンパニー出身で退社後、非営利法人(NPO)のクロスフィールズを立ち上げた小沼大地氏をゲストに招き、外資系コンサルティングファームについて議論し合った。

 議論終了後、進行役を務めた入山章栄氏と安田洋祐氏が、議論を振り返った。業務内容、ビジネスモデル、人材とあらゆる面で変容への過渡期にあり、チャレンジが必要になっているコンサルファームの立ち位置を改めて確認し、今とは大きく異なるであろう未来像を描いた。

(取材・編集=小林佳代)

現在の議論のテーマ
3回にわたって連載した「外資系コンサルティング業界」。これまでの議論を振り返り、改めてこの業界への疑問や未来への提言、入山氏と安田氏の議論への感想などをお待ちしております。
入山章栄早稲田大学ビジネススクール准教授(左)と、安田洋祐大阪大学准教授(写真は陶山勉、以下同)

編集部:新連載「入山章栄・安田洋祐の業界未来図鑑」の初回の議論が終わりました。ゲストを迎えて外資系コンサルティング業界について語り合ってもらいましたが、いかがでしたか。

入山:うん、すごく楽しかった。まず、経営学者の僕と経済学者の安田さんとで視点が違うというのがわかって、2人ナビゲーター制って面白いなと思いました。いい補完関係ができたと思います。

 就職先としてのコンサル業界について話していた時、御立さんが、就職人気ランキングを見た瞬間、「不健全だ」と言いましたよね。

編集部:東京大学と京都大学の学生の就職人気ランキングですね。コンサルファームが上位を独占していました。

「東大・京大でコンサル大人気」は危機

入山:僕、御立さんの感覚はすごくよくわかる。本当にヤバいと思う。危機ですよ。

 秋元康さんが以前言っていたという話を何かで読んだことがあるのですが、AKB48の初期のメンバーはAKB48そのものに興味があるのではなく、「何者かになりたい」という思いで入ってきた。だから成功した、と。でも、その後に入った人たちは、みんな「AKB48のメンバーになりたい」と入ってきている、と言うんです。

 同じことはビジネス界でも当てはまります。例えば全日空。昔はJALがナショナルフラッグで、全日空は今のLCC(格安航空会社)のようなマイナープレイヤーでした。そういう組織に、「いつかJALの鼻を明かしてやる」と野武士のような人たちが入社してきた。

 だから今の全日空の役員クラスの方々って、ある意味変わっていて、面白い人が多いんです。そうじゃなかったら、LCCのピーチ・アビエーションなんてつくろうとしないですよ。あれって究極のカニバリ※注1ですから。全日空という会社に入りたいわけじゃなくて、「何か面白そう」と勢いで入った人たちだから、イノベーター感覚があるんですね。

※注1:カニバリ
カニバリゼーション(共食い)の略。自社の製品・サービスが自社の他の製品・サービスと競合し侵食してしまう現象のこと

 BCGもマッキンゼーも以前は「何か面白いことができそうだ」「ぶっ飛んだことがやりたい」と思って入ってくる人たちばかりだった。それが今回、ゲストに来てくれたクロスフィールズ代表の小沼さんであり、ライフネット生命を立ち上げた岩瀬大輔さんらの世代。今はそうではなく、就職においてブランドが確立されてしまいました。マッキンゼーやBCGに入ることの方が自己目的化している。

安田:イノベーションを起こすような人物が、大学卒業後に就職する企業は変わりつつあるでしょうね。少し前は3年とか5年ぐらいコンサルファームにいる間に様々な手法を学び、実務に触れ、その経験を踏まえて起業していたけれど、今はそういう経験を一切せずにいきなり起業したり、先輩や友達が始めたスタートアップに就職したりという人が増えてきた。僕らの世代では起業ってすごくハードルが高かったけど、環境も変わってきて、資金も集まりやすくなっていますからね。