入山:今日、すごく勉強になったのが、そもそも我々が抱いている外資系コンサルファームのイメージと、現実に起きていることにはかなりの差があるということです。パワーポイントでプレゼン資料をつくって、かっこいい仕事のイメージですが、実は相当泥くさい。人と人とのリレーションが非常に重要である。そして、最後には直感というのを大事にしていると。

 未来のコンサル業界について、今の姿のままの延長を想像していてはいけなくて、周辺の世界と経営とをつなぐ、おそらくハブみたいな機能を担うことで価値を出していくようになるのだろうと僕は思いました。

御立:そうですね。これからは組織の形態も今のままでいいのかという議論が出てくるでしょう。ファームであっても、もっと自由に外と中が行き来できるようになるとか。それができてこそ、価値を提供し続けると私は思います。それができなかったら…。まあ、あと5年、10年は大丈夫でしょうけど、どこかの段階で「昔、コンサルファームっていう組織があってね」と言われちゃうかもしれない。現役の人たちには大変なチャレンジですね。

大きな変革求められるコンサルファーム

小沼:コンサルファームを卒業後、外の世界で活躍する人たちをもう1回引き込みながら、サービスを提供することも重要な気がします。再び社員にはできないにしても、客員コンサルタントに据えたりしてゆるくつながる。そうすることでコンサル業界は未来においても新たな形で価値を提供できるのではないかと思います。自分もコンサル業界にいた人間として、社会に貢献できることがたくさんあると感じました。

入山:大きな変革が求められる戦略コンサルファームですが、まだまだいろいろな可能性を秘めているということですね。

安田:お二人とも、長時間にわたって本当にどうもありがとうございました。

本日の出演者

御立尚資(みたち・たかし)
BCGシニア・アドバイザー

京都大学文学部卒業。米ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。日本航空を経てボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。京都大学・早稲田大学の客員教授。複数企業の社外取締役、NPO理事なども務めている。


小沼大地(こぬま・だいち)
NPO法人クロスフィールズ共同創業者・代表理事

2008年一橋大学大学院社会学研究科修了。在学中の2005年から青年海外協力隊に参加し、中東のシリアにて環境教育プロジェクトに従事。2008年マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年NPO法人クロスフィールズを創業。ビジネスパーソンが一定期間、新興国で社会課題の解決を行う「留職」を展開。


MC1:入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール准教授

1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大経営大学院で博士号取得。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授を経て2013年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)などがある。


MC2:安田洋祐(やすだ・ようすけ)
大阪大学経済学部准教授

2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経学学博士号取得。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『経済学で出る数字:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。

この記事はシリーズ「入山章栄・安田洋祐の業界未来図鑑」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。