御立:科学に近いところも必要になってきたと感じています。例えば、今の航空業界で収益がぶれる要因となるのは戦争とかパンデミックとか気候変動とかです。その辺のメカニズムをどうバランスシートに入れ込むのかが重要になってきている。

 経済学はゲーム理論や心理学を取り入れて進化してきました。経営学の世界も、その外側、周辺にあるものとの組み合わせに価値がたまってきていると思うんです。

 例えば以前、BCGにいた山口周くんは『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』という本を出した。マッキンゼー出身でヤフーCSO(最高戦略責任者)の安宅和人さんは、マッキンゼーに入社後、エール大学で脳神経科学の博士号を取得し、復帰後は消費者マーケティングにかかわってビジネスのあり方を変えました。アートとか脳生理学とか、そういう周辺に価値がたまってきていると思うんですね。

入山:なるほど。コンサルの周辺にあるんですね。

御立:そういう中でコンサルファームが価値を出せるか。変われるファームもあれば、変われないファームもあるでしょう。ただ、コンサル的スキルを持った人が、経営と外の世界とをつなぐ価値は大きいと私は信じている。BCGを卒業した人とも今、付き合いを続けているのはそういう理由もあります。

データとロジックにストーリーが加わり腹落ちする

小沼:ただちょっと疑問があるのは、僕はデザインファームとの付き合いもあるし、佐宗さんも存じ上げていますが、そういうカルチャーの人たちと、僕が知るマッキンゼーの人たちを思い浮かべた時、その両者が交わるという感じがあまりしない。本当に左脳と右脳の感覚の違いだとか、考え方、話し方、カルチャー、いろいろなマナーが違い過ぎて、融合していけるのかと。

入山:面白いですね。BCGとマッキンゼーの違いもあるのかな。

小沼:どうなんだろう…。僕は若手の職位だったので、そのレベルではBCGもマッキンゼーも同じように思いますが。マッキンゼーもBCGも、卒業した人がめちゃくちゃ活躍しますが、左脳でやっていた人がアンラーンして、左脳的なものを捨てて、右脳的なものと交わって起業するというケースが目立つ気がします。

入山第1回のお話ですごく印象深かったのは、結局、仕事はデータがあってロジックで詰めて、でも最後はストーリーだということ。ストーリーってまさに右脳ですよね。やっぱりそこが一番重要だということですね。

御立:そうですね。ストーリー、つまり腹に落ちるということです。この腹に落ちるという機能はAIにはできない。AIって相関でしかないから、ロジックもないんですね。でも人間はやはりある程度ロジックがないと腹に落ちないし、その後に心に落ちないと行動を伴わない。その2つのスキルはもともとコンサルティングの中にビルトインされていますから、今までとはちがう世界でも活躍できるといいなと思っています。?

未来のコンサルファームは今の延長線上にはない

<span class="fontBold">安田洋祐(やすだ・ようすけ)<br>大阪大学経済学部准教授</span><br>2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経学学博士号取得。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『経済学で出る数字:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。
安田洋祐(やすだ・ようすけ)
大阪大学経済学部准教授

2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経学学博士号取得。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『経済学で出る数字:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。

安田:時間が迫ってきました。ここで最後のクエスチョンです。日本全体、いや世界全体が抱えているビジネスの問題を解決するために、戦略コンサルは役に立てるのか。社会やビジネスを変えていけるのか。また○×棒を挙げていただきたいと思います。ではお願いします。はい、3人とも「○」ということで…。

 3つの議題で議論してきました。AI、デザインなど新しいものがどんどん入ってきて、戦略コンサルのあり方は今後、変わっていくかもしれません。けれど、根本的に働き方を変えるとか、イノベーションを生み出す時に、1つのドライビングフォースになる役割は今後も続いていくだろうし、続いていってほしいですね。

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