入山:根底に信頼関係を構築できているか。究極は人間性が問われるんですね。
BCGシニア・アドバイザー
京都大学文学部卒業。米ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。日本航空を経てボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。京都大学・早稲田大学の客員教授。複数企業の社外取締役、NPO理事なども務めている。
御立:そうです。ところが今はデジタルトランスフォーメーションが進行し、仕事の幅も広がっている。コンサルファームの中でも、プロダクトデザインをする人がいたり、エスノグラフィックリサーチ※注1をやる人がいたり、いろいろな職種の人がいます。
もとは文化人類学や社会学の研究で使われていた調査手法。消費者を深く理解するために日常生活に深く入り込み、インタビューや観察をすることで潜在的な課題やニーズをあぶり出す
全員が経営者のトラステッドアドバイザーになりたいと考えているわけでもないし、向いているわけでもない。経営者との信頼関係を再生産し続けてうまくやっていけるのか。エンパシーやシンパシーで動いてくれるというところまで関係をつくれるのか。これが「?」のつくところです。
ただ、ビジネスが拡大するかといえば、さっき、小沼さんがおっしゃった通りで、やることが増えていますから「○」です。お客様に足りない機能を埋めていこうとすれば、いろいろな人材がいないとダメだから、人数も増えている。
リスクを一緒に取りプロジェクト進める
あまり知られていないことですけれど、コンサルファームのビジネスモデルも変わってきています。成功報酬とは違うけど、エクイティーリスクに近いものを一緒に取りながらプロジェクトを進めるケースがあります。
例えば、BCGは米スターバックスとAIを活用したCRM(顧客管理)のジョイントベンチャーを立ち上げています。BCGはCRMエンジンの知的財産の一部を所有し、このジョイントベンチャーでスターバックスと競合しない企業に対して外販もしています。
また、大手海運会社との間では、世界中を行き来するコンテナ船を業界横断的に最も効率良い輸送ネットワークにできるようなプラットフォームをつくる取り組みを一緒にエクイティーリスクを取って進めています。
入山:面白い。事業そのものをやり出しているわけですね。
御立:すべてではないですけれどね。ある業界の、あるお客さんの先端的なところについて、一緒に価値をつくるということを広げてきている。
安田:そもそもコンサルティング業務に対するクライアントからの支払いというのは、成果とは連動しないんですか。
御立:基本的には時間で決まっています。弁護士さんと一緒。ただし成果が出ないと次がない。次がなければ食べていけません。そういう報酬体系が変わってきて、10億円、20億円というような巨大プロジェクトでは、「うまくいかなかった場合は、費用の3割は払いません」とか、一緒に事業リスクを取る方向に踏み込むようになってきています。