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 「あの業界、今、どうなの?」「競争環境が厳しくなるけれど、今後は大丈夫なの?」――。就活中の大学生やビジネスパーソン、経営者にとって、未知の業界の内情は大きな関心事だ。

 連載「入山章栄・安田洋祐の業界未来図鑑」では、経営学者の入山章栄氏と経済学者の安田洋祐氏が、それぞれの業界の関係者や業界をよく知るゲストを招き、都合のいい話も都合の悪い話も、ざっくばらんに議論し尽くす。読者からのコメントも積極的に取り入れ、業界を深掘りしていく。テキストによる記事に加えて、音声でも情報を提供。現場で繰り広げられる熱のこもった議論をリアルに味わえる仕掛けとする。

 第5シリーズ(File 5)では、ゲーム業界を取り上げる。3回目のセッションのテーマはプラットフォーマーの台頭。米グーグルや米アップルがゲーム関連のサービスを提供し始め、ソニーと米マイクロソフトは提携を発表した。巨大プラットフォーマーによるクラウドゲームの台頭で、ゲーム業界はどう変わっていくのか。既存のゲームメーカーには脅威か、それともチャンスか。

(取材・編集=小林佳代)

入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授(以下、入山):ゲーム市場の近況や「ガチャ問題」などの影の部分について話を進めてきました。今回のセッションでは、プラットフォーマーの参入をテーマにお話を伺っていきます。

 今、プラットフォーマーがどんどんゲーム業界に入ってきています。米グーグルがゲーミングプラットフォーム「Stadia」を北米と欧州で始めました。米アップルもサブスクリプションサービス「Apple Arcade」を展開しています。そして、最近の大きな話題は、ソニーと米マイクロソフトの提携です。私の見立てでは、恐らくマイクロソフトのクラウドサービス「Azure」にソニーのゲームコンテンツをのせることを考えていくのでしょう。

入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール教授
1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大学経営大学院で博士号取得(Ph.D.)。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授などを経て2019年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP)などがある。(写真:陶山 勉)

 このように、ゲーム業界では今、プラットフォーマーの台頭がホットな話題となっています。お2人はこれをどう見ているのか。まず、齊藤さんから教えていただけますか。

齊藤昌幸・みずほ銀行産業調査部調査役(以下、齊藤):はい。僕はまず、プラットフォーマーの中でも「Apple Arcade」はアプローチの仕方がちょっと違うのではないかと思っています。

齊藤昌幸(さいとう・まさゆき)
みずほ銀行産業調査部調査役
2010年にみずほ銀行入行。みずほ証券アドバイザリー第六部、みずほ銀行東京法人営業部などを経て、2019年から現職。ゲームのほか、アニメなどのコンテンツ産業や広告などのメディア業界を担当する。(写真:陶山 勉)

入山:そうですか。

齊藤:「Apple Arcade」はサブスクリプションのサービスで、月額600円ぐらい。オフラインでも「iPhone」や「iPad」で様々なゲームを楽しめるという仕組みです。2019年11月時点で、「Apple Arcade」には100本ぐらいのタイトルが含まれていますが、これらは基本的に課金できないような仕組みになっています。

入山:とすると、アップルはどうやってもうけるんですか?

齊藤:マネタイズをどうするのかというのは僕も気になっているところで。

入山:齊藤さんにもわからないと。ゲーム内広告みたいなものを増やしていくといったことも考えるんですかね。

齊藤:現在のところ、広告もないんです。「広告なし」「課金なし」という形で商売をしています。毎月600円がユーザーから入ってきますが、クリエーターやメーカーにも支払いが必要です。

 このサービスでマネタイズするというより、アップルはユーザーを囲い込むための1つのサービスとしてやっているのかな、と。もしかしたらこれからビジネスモデルを少しずつ変えて、「広告を見た後じゃないと遊べない」というような形になるかもしれませんが。

安田洋祐・大阪大学経済学部准教授(以下、安田):動画や音楽の世界では、定額課金型の配信サービスが台頭してきて、従来の個別アイテムの販売というビジネスモデルを大きく変えたという経緯があります。アップルが、ゲームでもそういう新しいサブスクリプション型のサービスを狙っているという可能性もありますね。