小沼:コンサルが果たす役割って、経営者の参謀とかアシスタント的なものだと思います。経営者が思いを込めて、胆力を持って最後に決断するという機能自体をコンサルが担えるわけではありません。だからコンサルが経営者の機能を侵食し弱めたとは僕は思えない。

 コンサルの影響としては、経営者の機能に対してより、経営企画機能に対しての方が大きい気がします。つまり、経営企画という、経営者の参謀機能のところを弱めたという面は、もしかしたら一定程度、あるかもしれない。

御立:そもそも欧米には経営企画部という巨大な組織を持つ企業はほとんどないですね。CSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)の下に4~5人のスタッフがいる程度で、そこが必要に応じてコンサルを入れたりしています。経営企画部が予算だの中期経営計画だのを全部つくり、人事部がすべてのヒューマンリソースを握っているなんていう会社はない。日本企業の組織は非常に特殊です。

入山:僕も日本企業の最大の問題は人事が弱いことだと個人的に思っているんです。図体はデカいけどバックオフィス的な機能しかしていない。会社を良くするための本当に戦略的な意思決定ができていない。経営企画部にも同じ問題があるのかもしれません。

日本の経営企画部はきちんと参謀機能を果たしているのか

御立:イケてない会社は規模の大きい経営戦略部や戦略企画部に、だいたい同じ大学の同じようなゼミを出て、同じようなエリートコースを歩んで来た人が配属されています。みんな発想が同じ。新しいことができない仕組みなんです。

入山:ダイバーシティー、ゼロですね。

御立:そういう経営企画部は人数を減らしていくことも必要でしょう。イケてる会社の経営企画部は外ともつながっています。それから、面白いのはCFO(最高財務責任者)が戦略的で、財務がわかるCSOがいる会社。そういう会社は非常にいい会社ですね。

入山:日本企業がそういう方向に変革していけば、コンサルファームは参謀としての機能を一層発揮できそうですね。

 外資系コンサルティングファームは本当に役に立ってきたのか。結論から言うと、「○」の部分ももちろんあるし、「×」の部分もある。我々が外部で抱くイメージと、実際に中で起きていることというのはだいぶ違っていて、中にいた方だからこそ見いだせる価値もあるということでしょうか。安田先生、納得していただけたでしょうか。

安田:ええ、もう大丈夫です(笑)。

入山:今、カンペで時間が押しているというプレッシャーをものすごく受けていますので(笑)、この議題の議論はここまでにしたいと思います。

本日の出演者

御立尚資(みたち・たかし)
BCGシニア・アドバイザー

京都大学文学部卒業。米ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。日本航空を経てボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバーなどを歴任。京都大学・早稲田大学の客員教授。複数企業の社外取締役、NPO理事なども務めている。


小沼大地(こぬま・だいち)
NPO法人クロスフィールズ共同創業者・代表理事

2008年一橋大学大学院社会学研究科修了。在学中の2005年から青年海外協力隊に参加し、中東のシリアにて環境教育プロジェクトに従事。2008年マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年NPO法人クロスフィールズを創業。ビジネスパーソンが一定期間、新興国で社会課題の解決を行う「留職」を展開。


MC1:入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール准教授

1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大経営大学院で博士号取得。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授を経て2013年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)などがある。


MC2:安田洋祐(やすだ・ようすけ)
大阪大学経済学部准教授

2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経学学博士号取得。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『経済学で出る数字:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。

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