入山:え? なに、小沼さん、八百屋の店頭に立って、ここに白菜置いて、ここはニンジンで……とやったの?

八百屋のおばちゃんの知識を「見える化」

<span class="fontBold">小沼大地(こぬま・だいち)<br> NPO法人クロスフィールズ代表理事</span><br> 2008年一橋大学大学院社会学研究科修了。在学中の2005年から青年海外協力隊に参加し、中東のシリアにて環境教育プロジェクトに従事。2008年マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年NPO法人クロスフィールズを創業。ビジネスパーソンが一定期間、新興国で社会課題の解決を行う「留職」を展開。
小沼大地(こぬま・だいち)
NPO法人クロスフィールズ代表理事

2008年一橋大学大学院社会学研究科修了。在学中の2005年から青年海外協力隊に参加し、中東のシリアにて環境教育プロジェクトに従事。2008年マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年NPO法人クロスフィールズを創業。ビジネスパーソンが一定期間、新興国で社会課題の解決を行う「留職」を展開。

小沼:そうです。ある八百屋に「ここに置くと白菜がものすごく売れる」ということを知り抜いたおばちゃんがいて。そのおばちゃんが何を考えているのか、何の情報を得て売り場をつくっているのかを学び、その知識やノウハウをロジカルに組み立て直し、一般化して全面展開しました。

入山:おばちゃんの言語化されていなかった知識やノウハウを言語化してフォーマットに落とし込んだということですね。外資系の戦略コンサルというと、データを分析してパワーポイントを使ったかっこいいプレゼンテーション資料をつくって……とスマートに仕事をしているイメージがありますけれど、かなり泥臭いことをやっているんですね。

小沼:ええ、机上の空論に終わらないプロジェクトがたくさんありました。そういう点で、コンサルファームは大きな価値を提供してきたと思います。

 他の業界の知識やノウハウを持ち込んで価値を生み出したケースもあります。例えば、プロ野球の東北楽天イーグルスへのコンサルティング。「外野」「内野A」「内野B」の3種類しかなかったスタジアムのチケットの値段を20種類ほどに拡大しました。対戦相手や曜日、空き状況によって変えるようにして。

 「ダイナミックプライシング」ですね。マッキンゼーで航空業界を見ていた人と一緒に担当して、航空業界のプライシングを応用したんです。彼は野球のことを全く知らなくて、スタジアムを視察した時に、「ふーん、ここがライトですね」って言ってたぐらいなんですけれど(笑)。

入山:それはすごいな。でも、だからこそ野球の常識にとらわれない角度から新しい価値を提供できたのでしょうね。

小沼:そうなんです。「このチームと戦っている時の客席はガラガラで、このチームと戦っている時は満員なのに、チケットの値段が同じなのはおかしい」と。

入山:あまり人気のないチームの時には値段を下げればいいということですね。

小沼:ええ、実際、チームによっては、子供たちに配ったりもしました。

入山:まあ、それが市場メカニズムですよね。

安田:経済学の「価格差別」※注1という考え方ですね。そういうアイデアって、企業内から持ち上がっても通りにくいかもしれません。野球チームの常識、スタジアムの常識が邪魔をしてしまう。でも外部のコンサルファームの人が、ある種の外圧のように言ってくると、「じゃあ、やってみよう」となる可能性がありますね。提案の中身ももちろん重要ですが、外部だからコミットできるというのはあるかもしれない。

※注1:価格差別
同じ製品・サービスの価格を、買い手によって変えること

小沼:僕も、コンサルファームにはそういうバリューが結構あると感じていました。内部だとしがらみがあって正しいと思っても言えない、実行できないことがある。それを「マッキンゼーが言ってるからさ」とある種、お墨付きのようなものが与えられる。

入山:なるほど。確かにそうですね。

外資系コンサルティング業界をめぐり、議論はヒートアップ <br>(写真=陶山勉、以下同)
外資系コンサルティング業界をめぐり、議論はヒートアップ
(写真=陶山勉、以下同)

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