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ゲームのマネタイズの方法は多様化しつつある

入山:読者の方からも、課金についての意見が届いています。「遊記」さんから、「ユーザーが『課金疲れ』しているとの指摘もあり、今のところこれが最も大きな問題なんじゃないか」と。「ラティ」さんからは、「課金システムのメリット・デメリットの議論をしてほしい」という要望がきています。この辺、どうお考えか、金野さん、教えてください。

金野:我々は様々なプラットフォーム、ビジネスモデル、ゲームを提供し、多様な遊び方を提案しています。家庭用ゲームのように圧倒的な感動体験を完成されたゲーム機で提案するものもありますし、日常生活のすき間の退屈な時間に気軽に楽しんでいただくようなゲームもある。それに伴って対価をいただく方法も様々あります。

 やってはいけないと思っているのは、お客様の期待を裏切ることです。お客様に対して「フェアであれ」と常に思っています。故意に裏切るようなこと、例えば先ほどから出ているガチャで言えば、提供の割合をいじるようなこと、そういうことは論外だと思っています。

安田:例えば、「レアなアイテムがこれぐらいの確率で出ます」と言っているのに、実際にはそれよりも低い確率にしちゃうとか、そういうことですね。

金野:そうです。お客様にフェアに情報を出し、丁寧にコミュニケーションを取った上で遊んでいただくのであれば、納得して対価をお支払いいただくことに問題はないと思っています。我々は、それに見合った価値をちゃんと提供しているという自負もございますので。

入山:ガチャのギャンブル要素を問題視する指摘もあります。たまにレアキャラが出てくるので、ルーレットみたいなもので中毒性があるんじゃないかと。そこを規制した方がいいのではないかという話がありますが、齊藤さん、この辺はどう思いますか。

齊藤:確かに、ソーシャルゲームの中で、ガチャを使った課金モデルのゲームはまだまだ多いとは思います。ただ2018年度で言うと、プレー時間が長いゲームの上位に「ポケモンGO」や「どうぶつの森」が入りましたが、どちらも課金要素は非常に薄いんです。

入山:ということは、「ポケモンGO」なんかは、あまりもうからないということなんですか。

齊藤:そうはいっても、体力回復とかふ化を早めるためのアイテムなどに課金する人は一定数います。

安田:それから、「ポケモンGO」の場合、「ポケストップ」という商業施設などからもお金をもらうというビジネスモデルになっているので、ユーザーに課金してもらわなくてもトータルとしてもうけることができる仕組みになっていますね。

入山:なるほど。どこからお金を取るかの工夫をしているわけですね。必ずしも一般ユーザーから取る必要はないと。

安田:その辺の選択の幅が広がっているという点は、家庭用ゲーム機にはなかった現象かもしれません。

金野:我々はガチャに関しても業界団体でガイドラインを作っています。お客様に対してフェアに商売させていただくということを徹底しています。一方、おっしゃる通り、お金をいただく方法はガチャ一辺倒である必要は全くない。お客様にどういう価値を提供するかというのがもともとの本質ですので。我々もガチャ以外のビジネスモデルを模索しています。マネタイズの手段として、ガチャもあるし別の方法もあるというのが、健全なコンテンツの提供の仕方だろうと思っています。

安田:スマホゲームに限らず、最近では家庭用ゲームでも、ゲームソフトをダウンロードしてプレーするという形が増えてきています。そうすると、流通網や販売方法も違う形が出てきますね。

金野:家庭用ゲームの時代にはソフトの売り切りという形でしたが、最近は追加コンテンツの使用権利を配信前に購入いただく「シーズンパス」の提供なども始めています。これによって、新しい遊び方も提案できるのではないかと思っています。

安田:今回はスマホゲームの影の部分をお聞きしてきましたが、技術の進展によってゲームの可能性が広がり、多様化する中でより良いものが残っていくであろうという明るい見通しが立ったように思いました。どうもありがとうございました。

(写真:陶山 勉)

金野 徹(こんの・とおる)
バンダイナムコエンターテインメント取締役NE事業部担当兼NE事業部長
1995年バンダイ入社。バンダイナムコエンターテインメントNE事業部マーケティングディビジョンディビジョンマネージャーなどを経て2018年4月から現職。

齊藤昌幸(さいとう・まさゆき)
みずほ銀行産業調査部調査役
2010年にみずほ銀行入行。みずほ証券アドバイザリー第六部、みずほ銀行東京法人営業部などを経て、2019年から現職。ゲームのほか、アニメなどのコンテンツ産業や広告などのメディア業界を担当する。

入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール教授
1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大経営大学院で博士号取得(Ph.D.)。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授などを経て2019年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP)などがある。

安田洋祐(やすだ・ようすけ)
大阪大学経済学部准教授
2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経済学博士号取得(Ph.D.)。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『経済学で出る数学:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。

■変更履歴
2ページ目に編集部注を追加しました。[2020/1/23 14:00]
2ページ目に、ガイドラインについての説明を追加しました[2020/1/23 16:30]