コンサルタントとして生き残れる3つのタイプとは
安田:さて、いろいろと議論してきましたが、こうしたお話を踏まえて、今、仮にお二人が学生で、これから就職活動をする立場だったら、マッキンゼーやBCGのような外資系戦略コンサルファームを選ぶでしょうか。もう一度、「○」か「×」で答えていただきましょう。○×棒を手に持ってください。いいですか。はいどうぞ。
御立:さんは「○」、小沼さんは「×」ですね。小沼さん、今だったらどこを目指しますか。
小沼:やはりいきなり起業する道に行くんじゃないかと思います。個人的な話ですが、僕はランキング上位にあるようなところに身を置くことにちょっと違和感がありまして。
御立:それはよく分かるな。
小沼:今の常識で「いい」と思われているところは、これからの時代をつくる人が行く場所ではないという印象があります。僕は「知る人ぞ知るところ」「ものすごく面白いことをやっているらしいところ」に行きたい。僕だけでなく、少しイノベーター志向が強い人はそういう発想をするんじゃないでしょうか。
安田:「○」にした御立さんはいかがですか。
御立:今になってひしひしと思うんですけど、自分は多動な気質があって、いろいろなことがやりたいタイプ。そういう性格にコンサルファームはとても合っていました。それから、組織で働くのに必要なポータルスキルが身につけられるのは大きい。コンサルが身につけるスキルとは、日本語と日本の学校システムが最も弱い、データとロジックでモデルをつくること、そして人を動かすためにストーリーを作り上げることです。私は文学部出身で、そういうことは全く訓練されていませんでした。
ウエスタン発祥のコンサルではそこを徹底的に鍛えられます。自分の頭で物事を認知して、モデル化して、ある一定の方向性の解を出して、伝えて人を動かすというスキルを若い時に身につけておけば後が楽です。
入山:改めてお聞きしますが、コンサルティング業界で働く喜び、楽しさって何でしょうか。
御立:長くコンサルタントとして生き残る人は3種類に分けられます。1つは“分かっちゃった”系。誰も解けないような問題をチームの力を使って、クライアントが「あっ」という解をつくって「分かっちゃった」という気持ちになる。これが幸せでたまらないというタイプです。もう1つは“新聞1面系”。新聞に自分の名前は載りませんが、「このM&Aは自分たちがいたから成功した」と密かに喜ぶタイプ。最後が“人間系”。「クライアントが喜んでくれた」とか「後輩が育った」とか、人の喜びを楽しいと思うタイプです。私自身は3番目のタイプでしたが、3つのどれかに当てはまるようなら、楽しくて仕方ないでしょう。
「新聞1面に出たい系」だった
小沼:僕が見てきた中では、“分かっちゃった系”が多かったですね。とにかく問題を解決することに異常にエキサイトメントを感じている。企業の戦略にかかわることって、人とか組織とか、非常に難しいことばかりです。その難しい問題をワクワク興奮しながら解いていた人たちが多かった。
安田:僕自身も経済学者としての喜びは同じです。経済というのは、人間社会、人と人との結びつきを分析するものでもあります。非常に難しいし、だからこそエキサイティングな分野です。そこで何か問題を解決したい、新しい考え方を取り込みたいという思いから僕は経済学者になりました。それを企業などの組織の中で実行できるというのがコンサルティングの魅力なんですね。
入山:安田さん、今からコンサル業界に入る?
安田:いやいや、僕は新聞に載るなら自分の名前が出ないとイヤなタイプなので…(笑)。学者の一番いいところは論文に自分の名前が載ることですから。
入山:“新聞1面に出たい系”だったか(笑)。僕もそうだな。
安田:我々はコンサルには向いていないということで(笑)、この議題の議論は終了とします。
●本日の出演者
BCGシニア・アドバイザー
NPO法人クロスフィールズ共同創業者・代表理事
早稲田大学ビジネススクール准教授
大阪大学経済学部准教授
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