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コンサルへの人気集中は「不健全」

入山:それ、すごく面白い指摘です。実はこんなフリップを用意しています。ある出版社の就職本からとってきたもので、2020年に卒業予定の東大生、京大生の就職人気企業ランキングです。見てください。1位から6位まで全部コンサルティングファームなんですよ。外資系コンサルファームのほか、日本の野村総合研究所とか、冨山和彦さんが代表取締役CEOを務める経営共創基盤もランキングに入っています。

御立:うーん、不健全ですね、そのランキング。正直言って。

入山:不健全?なぜですか。

御立:優秀な人がこぞってコンサル業界に行きたがるなんてすごく不健全だと思います。こうやってランキングをとったら、いろいろな業界が入らないとね。もっとぶっちゃけて言っちゃうと…。

ぜひ、ぶっちゃけてください、御立さん!

安田:ぜひ、ぶっちゃけてください。そういう企画ですから(笑)。

御立:コンサルティングファームって就職を目指す学生からすると「ミドルリスク・ハイリターン」なんですよ。入社して5年ぐらいの給与水準、そこで得られるスキル、後の転職可能性なんかを考えると、リスクとリターンのバランスがかなりいい。関心があるからではなく、そういう面から選んでいるように見える。

小沼:学生たちは、3年上とか5年上の先輩たちを見てアンケートに答えているのだと思います。ですから、これは「どこの会社に行った先輩たちがイケてるように見えるか」を示したランキングなのかもしれません。確かに3年前、5年前はここに挙がっている会社に、その世代のリーダーたちが就職していたような感覚があります。ただ、今はどうか、これからの時代はどうかというとちょっと分からない。

入山:それ、すごくよく分かります。BCG出身の代表的な経営者に岩瀬大輔さんがいます。岩瀬さんは日本生命出身の出口治明さんとライフネット生命を創業し、今は会長を務めている。同時に、アジア最大の保険会社AIAグループのCDO(チーフデジタルオフィサー)にも就任し、香港に住んでいます。学生や若手ビジネスパーソンが憧れるスター経営者ですよね。

 彼に「なぜBCGに入ったか」を聞いたことがあります。そうしたら、「当時のBCGはマイナーな会社だったけど、面白いことができそうと感じたからあえて入った」って言うんですね。今だったら岩瀬さんは就職人気ランキング2位のBCGには入ろうとしなかったかもしれない。

小沼:入っていなかったでしょうね。ただ、コンサル業界に行く人たちって、コンサルで一生食べていくのではなく、修業を積んでまた新しいことをやろうとしている人が多い気がするので、それを見越した就職希望のランキングととることもできます。

御立:それはありですね。それならば納得。

入山:小沼さんが言う通りで、たぶん、コンサルファームへの就職を希望してる人って言葉は悪いけど“腰掛け”と考えているんですよ。20代前半で人生の進路なんてそんなにはっきり決められない。汎用的なスキルとか思想とか人脈を得る上で最高峰に位置するのがコンサルファームだと。でも、そういう腰掛けの感覚って、普通の会社は受け入れられないんじゃないでしょうか。長く勤め続けて会社に貢献してほしいと思っているはずです。BCGはどうですか。

御立:スキルや人脈を身につけたいと入る人が全体の半分ぐらいいていいと思います。コンサルタントの仕事を続けているうちに、「オレはこれが向いている」と思う人が残ればそれでいい。いろいろな人がいていいと思います。

 最近、BCGは出戻りが多いんですよ。ベンチャー企業に転職して社長とかCOO(チーフオペレーティングオフィサー)を務めた後にまた戻ってきてパートナーになるというようなケースが。

入山:出戻りもOKなんですか。

異なる解を出すために必要なのは多様性

御立:OKです。私の前のBCG日本代表だった内田和成さん(編集部注・現早稲田大学ビジネススクール教授)が「出入り自由にしよう」という方針を立てたので。それは、多様なバックグラウンドの人材を集めようという狙いからなんです。

 戦略コンサルファームって、クライアントの会社一つひとつにすべて異なる解を持っていかなくてはなりません。様々な解を生み出すには、様々な人材をそろえる必要があります。だからBCGは多様性を重視してきた歴史があります。そもそもBCG創業メンバー4人のうちの1人は、当時の米国でも珍しかった女性の経済学博士。意図的に加えたんです。

安田:積極的に多様性を埋め込んできたんですね。

御立:ええ。採用も独特かもしれません。見ているのは2つだけ。「Is he or she smart enough?」と「Are you willing to travel with him or her for 2 weeks?」です。この2週間というのがミソ。3日間ぐらいなら自分と同じタイプが楽でいいけど、2週間も一緒にいるなら、自分とちょっと違うタイプの方が新鮮なところがあっていい。かといって、一緒にいるのが苦痛な人は仲間にしてはいけない。こういう視点で、多様な人材を集めてきたんです。