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現在の議論のテーマ
子どもの「やりたいこと」どうやって見つけますか? どうやって伸ばしますか?

 メディア・出版大手のカドカワが設立した学校法人角川ドワンゴ学園の運営する通信制高校、N高等学校。ネットによる授業をメーンとする従来型に縛られない方法を採用。2016年4月に開校すると、VR(仮想現実)を使った入学式などで注目を集めた。

 授業だけでなく、生徒同士のコミュニケーションやレポートの提出、部活でさえもネットを使う。その独自性ゆえに「協調性が育まれないのではないか」などの批判もあったが、「圧倒的な自由度にひかれた」「やりたいことを見つけられる」と支持を受け、順調に生徒数を増やしている。現在の在校生は7875人に上る(1月時点)。

 IT×グローバル社会を生き抜く“想像力”を身につけ、世界で活躍する人材を育成するーー。ネットの高校だからこそ生徒の「やりたいこと」「学びたいこと」に時間を使えるというのがN高校の言う魅力だ。

 Raise「提言 子育ての未来」ではこれまで「子どもに必要な能力とは何か」を読者と議論してきた。今回はN高校の上木原孝伸副校長を招き、どうやって「学びたいこと」を見つけるのか、その学びたいことをどう伸ばしていけばいいのかを議論していく。

ルートに沿って歩けば安心という神話は崩壊している

N高等学校副校長 上木原孝伸氏
大手教育企業の進学塾部門で17年にわたり教壇に立ち、国語のエキスパートとして多くの受験生を合格に導く。ITと教育の融合の可能性を感じ、ドワンゴに入社、開校前からN高等学校のプロジェクトに参画(写真:吉成 大輔)

N高等学校では「これからの時代に子どもたちに必要な能力」をどのように考えていますか?

上木原孝伸・N高等学校副校長(以下、上木原氏):当たり前のことかもしれませんが、必要な能力は子どもによって違うのだろうと考えています。だから我々は「こうあらねばならない」というイデオロギーは持たないという方針を掲げています。

 通信制高校なので、生徒には自由に使えるたっぷりとした時間がある。その時間を使って、卒業後に何をしたいのか考えて欲しい。そのために何が必要なのか。そのスキルを高校でつけていく。エンジニアなら当然、ドワンゴのトップエンジニアによるプログラムを用意しています。他にも多様なプログラムを用意しています。「何をしたいのか」の過程に大学進学があるのなら、受験勉強も否定しません。

Raiseでは子育てについて読者と議論を重ねてきました。多くの読者から「変化の激しい環境の中で、今後はその変化に対応できる柔軟性が重要ではないか」との意見が挙がっています。

上木原氏:「柔軟性」は私も重要だと思います。私が受験産業で働いていた時は、ある程度のルートを歩いていけば人生が約束されていると考える人が多かった。今は違いますよね。SNSで誰とでも繋がれるし、アイデアをすぐ形にできる。誰でもスターダムにのしあがるチャンスがたくさんある。そういう意味で、柔軟であることも大事ですが、自分がやりたいことを見つけることも大事になってきます。

昔と比べて子どもが身につけなければならない力が変わってきた?

上木原氏:あるルートに沿って歩んでいけば安心という方程式は、実はバブル崩壊ですでに成り立たなくなっているんですよね。私はロスジェネ世代で大学卒業時は就職氷河期だったので、よく分かります。大企業が潰れるのをみていたから。友人たちも高い偏差値の大学を卒業したけど就職先が見つからなかったりしました。神話は20年以上前にすでに崩れていたんです。