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 Raiseで議論をしているANA「社会を豊かにするマイレージの活用策とは」。改めて、航空会社がマイレージを提供する理由について、全日本空輸(ANA)のグループ会社で「ANAマイレージクラブ」を運営する「ANA X」に聞いてきました。

 そもそも航空会社がマイレージサービスを始めたのはいつ頃なのでしょうか。調べたところ、米アメリカン航空が1981年に始めたのが最初のようです。日本の航空会社でもANAや日本航空(JAL)が1990年代に導入しました。現在は世界の航空会社がマイルを共通でためたり、使ったりするための連合(=アライアンス)を組み、利便性の向上に努めています。ANAは「スターアライアンス」、JALは「ワンワールド」に加盟していますね。傘下の航空会社で搭乗すれば、利用者が加入するマイレージがたまる仕掛けです。

ANAはスターアライアンスに加盟している(写真:アフロ)

 ANA Xでウェブマーケティングを担当する広瀬貴信さんはこう言います。「マイレージを通じてお客様との接点をつくり、顧客満足度の向上につなげていきたい」

 マイレージを提供する最初のメリットは、利用者の搭乗データなど、会員情報を入手すること。その利用者がどの路線によく搭乗しているのか、把握できます。利用者に搭乗路線で展開するキャンペーンを通知したり、あるいは機内販売の情報を事前に提供したりできます。ANA Xでは将来は旅行先にあるマイルのたまる提携先のレストラン情報など、旅に関わる情報を広く伝えることも検討しているそうです。

 航空会社にとってのマイレージとは経営的な視点からも提供する理由があります。

 海外でテロや感染症などが発生すると、利用者は旅行や出張を手控えるようになります。国土交通省によれば、米国で同時多発テロ事件が起きた2001年9月には日系4社の太平洋路線の旅客者数は前年同期比で4割近く落ち込んだといいます。こうなると、航空会社にとっては大打撃。マイレージを付与するクレジットカードを発行することなどで、結果的に航空事業での運賃収入以外でも売り上げを立てることが可能になるわけです。

 目に見える課題もあるそうです。ANA Xでマイレージクラブの企画・運営を手掛ける蛭川基さんは「20代以下のお客様や退職後のシニア層の利用促進を図ることが今後の課題です」と話します。

 「ANAマイレージクラブ」の2018年度末の会員数は延べ3400万人で、この5年間でみても会員数は20%以上増えてはいます。特典航空券の交換や国際線でのアップグレード、購入時の割引といった航空券に関わるサービスを受ける利用者が大半ですが、会員の中心は40~50代のビジネスパーソン。性別も約7割を男性が占めているとのことです。より安定的な経営やマイレージサービスを展開するには、顧客層の幅を広げることが欠かせないのです。

ANAマイレージクラブの会員数(年度末)

 ここまでは利用者や航空会社にとってのマイレージの利点を見てきましたが、マイレージを需要喚起につなげ、結果的に社会貢献に役立てることも可能です。前出の広瀬さんは「マイルをためて特典航空券に換えてもらえば、旅先での消費につながり地方創生につながる可能性があります」と指摘します。

 実際、ANAグループでは2019年度に地方路線も含まれる「今週のトクたびマイル」というプログラムを提供。予約状況を見ながら予約に余裕のある路線を通常より少ないマイル数で搭乗できるようにして、集客につなげようという試みです。確かにデータで見ると、ANAグループの18年度の国内線搭乗率は平均約7割です。

 より多くの利用者に使ってもらうことで、ANAグループはもとより、利用者や社会にとっても価値あるサービスをどう提供していくか。考えられることはまだまだありそうですね。