最近よく耳にするフィンテックという言葉。具体的にどのような分野にどのような技術が使われているのでしょうか。また、既存の金融機関はフィンテックベンチャーの動きにどう対応していくのでしょうか。大和証券グループ内でシンクタンクの役割を果たす大和総研の伊藤慶昭フロンティアテクノロジー部長に聞きました。

(聞き手は白井咲貴)

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大和総研の伊藤慶昭・フロンティアテクノロジー部長
大和総研の伊藤慶昭・フロンティアテクノロジー部長

「フィンテック」は金融とIT(情報技術)を組み合わせた造語です。広く捉えられがちの概念ですが、具体的にどのような技術を指しているのでしょうか。

伊藤慶昭・フロンティアテクノロジー本部フロンティアテクノロジー部長(以下、伊藤氏):フィンテックはバズワード(はやり言葉)のようになっていますが、核は3つだと思います。「AI(人工知能)」「ブロックチェーン」「個人認証」です。とりわけAIが重要になってくるでしょう。

 金融システムには、以前からITが使われています。従来と決定的に違うのが、AIの存在です。AIを使うことで、未来をより正確に、そしてスピーディーに予測できる可能性が高まります。これまでのITも未来を予測できましたが「決め打ち」のようでした。

 AIが導入されるとシステムがこれまでの動きを学習できるようになるのです。 小売店の仕入れを例に考えてみましょう。アイス100本、ペットボトルのお茶100本を翌日届くように仕入れるとしましょう。以前のITシステムは、人間が決めた仕入れ本数分を注文し、翌日までに届けるための仕組みでした。それがAIの時代になると、「明日は気温が30度を超えるから、アイスの売れ行きは150本くらいになりそうだ。とはいえ、室内はエアコンが効いているので、お茶は温かいものも30本ほど用意しておこう」と予測して仕入れられるようになるのです。人の経験や勘を超える大量の情報から意外性を見出すのもビックデータがもたらす妙味です。

大和証券グループの中ではどのようにAIを活用しているのでしょうか。

伊藤氏:大きく分けて3つの分野で使っています。1つ目はリテール(小口金融)ビジネス。個人投資家の行動を分析し、次にどのような商品が売れそうかといった予測をしています。また、結婚や出産といった人々のライフイベントにあわせてタイミングよく商品を提案できないか、モデルの構築に取り組んでいます。

 2つ目として、資産運用分野での活用の可能性を探っています。具体的には株価予測です。四半期に1回、上場企業から決算短信が出ますが、それをAIに読ませてどの銘柄が今後1カ月で上がるかどうかを予測しています。

 最後の3つ目は、人間の肌感覚の景況感を数字で表すことへの取り組みです。日本銀行は地域経済報告(通称さくらレポート)で、3カ月ごとに地域の経済状況を発表しています。私たちはさくらレポートのテキストデータを指数化しています。指数化にあたっては、内閣府の景気ウォッチャー調査の膨大なテキストをAIに読ませ分析させています。

 テキスト分析はかなり応用が利きます。投資銀行部門の業務の効率化にも利用しています。試験導入を始めたのが企業分析ツールです。 企業の財務情報や事業計画といった公開情報などをもとに、M&Aの候補先企業を抽出する業務があります。特許に関する情報や有価証券報告書に書かれた文章をAIが読み込んで分析できるシステムを開発しました。AIが大量の情報を分析することで、意外な企業をマッチング先として提案できることを期待しています。こうした提案能力は本来担当者によってばらつきがあるものです。経験が浅い担当者でも的確に提案できるように支援することで、部門の能力向上とともに、人材育成にも貢献してくれるのではないかと考えています。

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