味の素が普及を図る「勝ち飯」。栄養バランスの整った食事の総称で、元々はアスリートをターゲットに始まりました。現在では勝ち飯の一般化を目指し、家庭でも気軽に作れるような献立の提案などをしています。勝ち飯のマーケティングを担当している仙波正大さんに聞きました。(聞き手は白井咲貴)

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日経ビジネスは、読者が自分の意見を自由に書き込めるオピニオン・プラットフォーム「日経ビジネスRaise(レイズ)」を立ち上げました。その中のコーナー「オンライン・インターン」では、味の素などをメンターに迎え、学生の成長を支援するインターンプログラムを提供しています。ぜひ、ご参加ください。

<オンライン・インターン>
「勝ち飯」どう広める?食品マーケを学ぶ
三菱商事「天然ガスビジネスを学ぼう」
JR東日本「10年後の駅の役割を考えよう」
家庭用事業部販売マーケティンググループマネージャーの仙波正大氏

まずは、味の素が取り組む「勝ち飯」について教えてください。受験や試合前に食べる「ゲン担ぎ」のようなものですか。

仙波正大・家庭用事業部販売マーケティンググループマネージャー(以下、仙波氏):ゲン担ぎと混同されがちですが、別物です。勝ち飯は特定の料理ではありません。元々はアスリートをサポートする取り組みから始まりました。栄養バランスのとれた食事によって選手個々の強みを伸ばし、弱点を補うのが狙いです。選手によってサポート内容は異なりますが、当社の管理栄養士が海外での大会にも帯同して、食事のサポートをすることもあります。

 2017年から勝ち飯の一般化に本格的に取り組んでいます。アスリートに向けて勝ち飯を提供する中で、様々な知見を培ってきました。身体づくりに効果的な栄養素を無理なく摂取できる食事を、一般消費者にも広げていきたいと思います。

栄養バランスの整った食事が大切なのは分かりますが、家庭で作るのは難しいのではないでしょうか。

仙波氏:アスリートに提供した食事は、当社の既存の商品を取り入れながら作っています。特別な食材を使わなくても、商品の組み合わせを工夫すればアスリートが摂取しても十分な食事ができあがります。この点を一般の方にも伝えていきたいです。

一般消費者の中でも特にターゲットとしている層はありますか。

仙波氏:部活生や受験生です。特に、中学生から高校生までを対象にしています。部活生や受験生は、一般消費者の中でもアスリートに近い部類に入ります。まずはこの層を突破口にしていきます。

具体的にどのような方法でターゲットに訴求しているのですか。

仙波氏:最も重視しているのは、部活生や受験生の保護者へ訴求することです。ターゲットの中で、自分の食事を自分で作っている人は少数派ですよね。食事を作っているのは、多くの場合保護者です。保護者に向けてスーパーの店頭に「勝ち飯」のパンフレットを置くのはもちろん、アスリートに勝ち飯の意義を講演してもらうこともあります。例えば、北京、ロンドン五輪のメダリストで勝ち飯アンバサダーの松田丈志氏に、地元九州の学校で生徒やその保護者に向けて世界を目指すための特別授業をしてもらい、その中で勝ち飯ついても話してもらいました。

 もちろんターゲットに直接訴求する方法もとっています。現在、全国の学校で2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた教育プログラムが展開されているのですが、当社もそこで勝ち飯に関する授業を実施しています。栄養バランスの良い食事とはどのようのなものなのか、具体例を挙げながら説明しています。

勝ち飯の一般化を目指してから約2年。この2年で浸透してきたと言えますか。

仙波氏:まだまだ道半ばというのが正直なところです。部活生の母親に調査したところ、勝ち飯の認知度や理解度は高かったものの、実際につくったことがある人はまだ多くはありませんでした。

 勝ち飯を家庭でも作ってもらうため、ポイントを絞って伝えています。タンパク質や野菜をしっかりとる、汁物を献立に取り入れるといったことです。このうち、今年特に訴えていきたいのは、汁物を取り入れることです。当社が定期的に実施している調査で分かったのですが、栄養バランスの整った食事をとっている人は、汁物をうまく活用しているのです。汁物にタンパク質も野菜も入れられますから、今年は汁物を中心に伝えていきたいと思います。

 まずは部活生や受験生に浸透させなければなりませんが、その後は、健康を気遣う幅広い層に広めていきたいと思います。例えば生活習慣病や若い女性を中心とした低栄養など、健康や栄養に関する社会課題は多くあります。勝ち飯でそれらの課題を解決していきたいです。10年以上かけてアスリート向けに蓄えた知見を、まずはアスリートと親和性の高い部活生や受験生にも広げ、その後徐々に「健康」という軸で裾野を広げていく。1つのスモールマスを出発点に、隣のスモールマスも確実にとっていきたいです。

日経ビジネスRaiseの学生向けコーナー「オンラインインターン」では、「味の素『勝ち飯』どう広める?」をテーマに議論しています。議論で期待することなど、参加する学生に一言お願いします。

仙波氏:勝ち飯のマーケティングの真髄は、特定の商品を売るのではなく、健康課題の解決につながる食事という考え方や、それを具現化するための献立を提案していることです。特定の商品に紐づいたマーケティングとは異なるため大変さはありますが、やりがいも大きいです。消費者自身も気づいていないニーズを掘り出し、施策を打つ。それが少しでも当たったときは嬉しいですね。学生の皆さんにもぜひその感覚を味わってほしいです。