デザインの対義語は自然

奥平:デザイナーという職能が果たせる役割はなんでしょうか。

永井氏:まず「デザインとは何か」というのは結構難しいんです。先ほど、研究会が分裂しそうになったという話をしましたが、研究会でもデザインの概念は人によって違っていました。

 僕は「デザイン」の対義語は「自然」ではないかと思うんです。つまり、人がまったく入らない自然の状態に人の手を加えてちょっと環境を良くしたりすることがデザインだと思います。石器時代で肉を割くときに、例えば石器を作ってみるとか。少しでも状況を改善しようと構想して、それを形にすることが、すなわち一番広い意味でのデザインだと思うんですね。

 そう考えると、ここから見える窓や机や椅子……。デザインされていないものは1つもないですよね。人間的な行為というのは全て、デザインという一番大きな概念で包括できるんじゃないかなと僕は思っているんです。つまり、現状に挑み、それを良くしていこうという行為が全てデザインなんです。

永井氏と議論するオープン編集会議メンバー
永井氏と議論するオープン編集会議メンバー

デザインで、企業の社会的役割を問い直す

水嶋玲以仁氏(グローバルインサイト):現在の日本の経営の在り方を考えたとき、デザインをプラスした方がいいと思う部分はありますか。

永井氏:文化性、社会性、経済性という3つの交点にデザインを置くんですよ、という話をよくします。企業は社会的な存在なので、利益追求だけではなくて社会にとってどういう意味を持つかが重要です。最近は「パーパス(目的)」といったことが盛んに言われますが、社会にどのように役立つ存在になるのかという視点もデザインだと思います。その意味で、今の経営にはますますデザインが重要になっていると思います。

水島氏:今はそういったものが欠けてきている。

永井氏:はい。全般的にはそういうところはあると思います。やはり経営環境が厳しいので、単年度の利益を追求するような風潮が強まるのはやむを得ない側面もあるとは思います。しかし、改めて、そもそも何のために存在しているんだっけ、と問い直す姿勢は非常に重要なのではないでしょうか。

中村徳男氏(資生堂):海外市場に対して、日本企業はどのようなブランディングをしていくべきでしょうか。

永井氏:やはり、その企業の固有の価値、そもそも何のために存在しているのか、を突き詰めていくことが大切だと思います。おそらく、資生堂であれば資生堂らしさとか、歴史性とか、どういう経緯で今の形になっているかとか、そういうことがブランディングで重要でしょう。

 結局、何か上辺だけを取り繕ってもダメで、深掘りをしてキラキラしているエッセンスを見つけて、それをどれだけ形にできるか、言語化できるかがカギだと思います。

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