キャリアを積んでも、組織に所属していても「パンクな姿勢で仕事をしていきたい」と思っている人は多い。だが、現実にはさまざまなしがらみがそれを阻む。だからこそ、『ビジネス・フォー・パンクス』は多くの人に受け入れられ、「かつてのハングリー精神を取り戻さないと」という感想がSNSなどに書かれた。

この本に書いてあることを信じるな!?

 本を読んでも、「参考にはなるが、著者のやっていることを真似はできない」ということはよくある。実際、ジェームズ・ワットのやっていることはほとんど真似できない。だが、それでも多くの共感を得たのは、「人の話は聞くな。アドバイスは無視しろ」という過激なメッセージを連発したあとに、本の最後でこんなふうに読者を突き放したからではないだろうか。

ぼくは、人のアドバイスは聞くなと言った。それはこの本に書いたことすべてにも、無条件で当てはまる。

 ネタバレするようで申し訳ないが、ここに著者のいう「パンク精神」のすべてが凝縮されているような気がするのである。

 一橋大学の楠木建教授は、「解説」をこんなふうに締めくくっている。

自分の仕事と生活を貫くコンセプトをメタファーで獲得する。経営者であろうとなかろうと、これこそが仕事の一丁目一番地に他ならない。著者にとっては、それがパンクであり、パンクの精神でつくったクラフトビールだった。
 この本を手にとっている、あなたにとっての「パンク」とは何か。これから読もうという人は、この問いを念頭において読み進めてもらいたい。すでに読み終わった人は、改めて自問自答してもらいたい。本書を読むことによって、その答えが見つかったとしたら、著者も本望だろう。本書から得られる最大の価値はそこにある。

渋谷のBOOK LAB TOKYOで開かれた出版イベント。起業家の鶴田浩之氏、著述家の石黒謙吾氏によるトークセッション。

 2016年9月16日に渋谷のBOOK LAB TOKYOで開かれた本の出版イベントには、場所柄か若い起業家、投資家が集まった。学生のころに起業し、BrewDogを愛飲しているという20代前半の若者も多かった。彼ら彼女らの中から、独自のメタファーを備えた元気な企業が日本を変えていくことにも期待したい。