担当: 鶴見智佳子 ちくまプリマー新書編集部

担当: 鶴見智佳子 ちくまプリマー新書編集部
ちくまプリマー新書は、高校生から読める新書シリーズです。
その一冊として『戦争とは何だろうか』は刊行されました。
著者の西谷修さんは哲学者です。『夜の鼓動にふれる――戦争論講義』(ちくま学芸文庫)では、“理性、秩序、啓蒙といった西洋思想における「光」の外には、非理性、無秩序、野蛮、暴力などの「闇」が蠢く。戦争は闇が支配する「夜の世界」の現象、近代の理性が沈む夜だ”と書いています。じっくり読むにはお薦めなのですが、やはりちょっと難しい。将来を担う若者たちに、今、戦争について考えるきっかけとなる本はできないものか…。戦争について根源的に解説した本が欲しい、そう思ってこの本を企画しました。
戦後70年が過ぎ、日本では、既に若者の親である私たちも戦争を知り(体験して)ません。祖父母が幼いころに体験したかどうか…。そのくらい昔の話となりつつあります。
もちろん日本以外では、世界中さまざまなところで戦争は起きています。私たちが実感できないくらい遠いところで起きていたりするのでニュースで読んでもピンとこない人がほとんどではないでしょうか。
パリやブリュッセルなどでテロリストによる殺傷事件も起きています。テロリストたちの行為と戦争はどう違うのでしょう?
テロリストは悪いやつ?
戦争は人殺しだからいけないこと?
善いか悪いかは、とりあえず置いておく
戦争が善いか悪いかを考える前に、戦争そのものについて考えてみないと、今世界で起こっていることが理解できないのでは?
そもそも、戦争は喧嘩とか領地の奪い合いとかとはどう違うのでしょう? 人同士ではなく、国同士だと「戦争」なのでしょうか? でもテロリストとの戦争では、相手国(敵国)がいわゆる国家ではありません。
本書では、世界のあり方を変えてゆく大きな要因でもあった戦争について、善し悪し抜きに考えています。
善し悪し抜きにというのがポイントです。戦争は立場が違えば善し悪しが全く違ってしまいますし、愛憎や犠牲などを伴う戦争についての議論は、昔ながらの戦争のイメージに引きずられがちだからです。
現在の戦争がどのようなものか理解するために、私たちはどのような事態を「戦争」と呼んでいるのか、戦争は国家や国民や産業やメディアとの関係でどのように規定されてきたのか、人々の生存のあり方とどう関係しているのかをたどっていきます。
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