たとえばの話、プロレスの話とナショナリズムの話がつながるなんてこともある。
 そうした生き方論・仕事論としても、本書を読んでいただけたら、編集者冥利に尽きます。

そんな私がやられた本

 「働かないおじさん」の給料が、なぜ高いのか? なぜ産休でも人員補充がないのか? なぜ新規事業のハシゴはすぐ外されるのか?

 とかく臭い物にはフタをしてしまいがちな会社員生活ですが、本書には、思わずドキリとする真実が満ち満ちています。

 それもそのはず。著者の本間さんはヤフーの執行役員として、さまざまな人事制度改革に取り組むパイオニア。中原先生は東大准教授というアカデミシャンでありながら、企業の人事部からの注目を集める俊英。この最強タッグなら、倒せない敵なんていませんから! 二人は働く人たちのホンネに寄り添いながら、現場と理論の間を往還。本書はいうなれば“職場で使えるサイエンス”です。

幾つになっても学び続ければ、成長できる

 中原先生には、弊社でも『駆け出しマネジャーの成長論』(中公新書ラクレ)を刊行していただきました。こちらは、実務担当者から管理職へというステップアップがテーマ。この通過儀礼に苦戦する多くの人たちに向けて、プレイヤーからマネジャーへと脱皮するヒントを伝える一冊です。

 両著に通底するメッセージが、胸に響きます。
それは、自分自身を振り返って、変えるべき時には自らを変える勇気を持つこと。人は幾つになっても学び続ければ、成長できる、生まれ変われるのだということ。

 長い職業人生の中では、誰しもつまずいたり失敗したりすることもあるでしょう。キャリアを大きく変更することだってありうる。たとえばの話、明日のあなたがプロレスにたどりつく人生だって、万に一つ「絶対ない」なんて言えない。

 心が折れそうな時、セコンドのように励ましてくれる2冊です。
(著者注:『会社の中はジレンマだらけ』を本欄で取りあげた理由ですが、先述した弊社における企画会議の内実を意識しているなんてことは、決してありませんので…)

黒田剛史(くろだ・つよし)
1996年、旧・中央公論社に入社。2001年から中公新書ラクレで『ぷちナショナリズム症候群』『オレ様化する子どもたち』などを担当。06年から光文社新書で『「言語技術」が日本のサッカーを変える』『東大合格高校盛衰史』などを手掛けながら本作りの修行。11年、中央公論新社に出戻り、ラクレで『あらゆる領収書は経費で落とせる』『新・地政学』、単行本『エンピツ戦記』『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』などを担当しながら、修行を継続中。
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