私の編集した本読んでください!
プロレスという生き方-平成のリングの主役たち』三田佐代子著、中公新書ラクレ
担当:中央公論新社 特別編集部(ラクレ担当)黒田剛史

「なぜ(硬派な)ウチがプロレスの本を?」

『<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4121505549/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4121505549&linkCode=as2&tag=n094f-22" target="_blank">プロレスという生き方-平成のリングの主役たち</a>』三田佐代子著、中公新書ラクレ
プロレスという生き方-平成のリングの主役たち』三田佐代子著、中公新書ラクレ

「この本はな、その辺のプロレス本とはレェェェェヴェルが違うんだよ!読んだあと感動して...涙の雨が降るぞ!」

 これはプロレス大好き芸人・レイザーラモンRGさんのツイートです。それも、なんと発売当日という早ワザ! 幸先の良い感想を目にして、「この本はやっぱりいけるんじゃないかな」と期待感を高めたのでした。

 実は私にとって、いや創業130年を誇る弊社にとっては、初めて刊行するプロレスの本。それを逆手に取って「僕らのようなど素人が読んでも、断然面白い」という内容面への絶対的自信はありました。類書データも調べ上げ、「ヒット作は3万部程度、教養系の新書から出して重版した作品も少なくない」。

 それでも、社内の企画会議の場では、「なぜ(硬派な:著者注)ウチがプロレスの本を?」という怪訝そうな表情を浮かべる上司たち。昨今の「プ女子(プロレス大好き女子)」ブームや、『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』のような昭和を回顧する動きなど、人気再燃についてどうにかこうにか説明をして、再提出を経て出版にこぎつけたのでした。

 ですので、発売3日で「たちまち重版」となるにいたって、うれしさよりもホッとしたというのが正直なところです。

書店員さんに、こんなにプロレスファンがいたなんて

 RGさんだけでなくあちらからもこちらからも、「感銘を受けた」「さすが三田さん」「闘魂三銃士の後、ご無沙汰だったがまた観たくなった」等の賞賛がソーシャルメディアを中心に巻き起こりました。「#プロ生き」に寄せられたツイートの数々に、制作サイドの側こそ感銘を受けること仕切りです。

 この勢いはオンライン上だけに留まりません。

 リアル書店でのイベント、サイン会…パッと見は華やかで聞こえはいいのですが、ふたを開けると集客に苦労しているケース、実は少なくありません。

 ところが本書の場合、心意気をもった書店さんが自ら熱心に、手作りのイベントを仕掛けて大成功を収めてくださいました。

 あの「本屋プロレス」(本書、飯伏幸太の章を参照)で一躍名を馳せた伊野尾書店さん。ファンの皆さんが、ブルーシートの上に車座になって三田さんを囲み、至近距離での熱気溢れるトークイベントになりました。

 紀伊國屋書店新宿本店さん。この日本を代表する旗艦店で、プロレス関連イベントがたびたび行われているのを皆さんはご存じでしたか? 仕掛け人である文芸担当の今井麻夕美さんの指揮のもと、男色ディーノさんという個性派レスラーをゲストに迎え、1000円のチケットは発売数日でソールドアウトに。1時間の対談予定が30分オーバーするほど盛り上がりました。

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