そんな私がやられた本
資本主義の終焉、その先の世界』榊原英資、水野和夫著、誌想社

 「ヤンキーの虎」に象徴されるように、地方経済にも主役交代という波が押し寄せていますが、より広く世界に目を向けてみますと、本書のタイトルにあるように「資本主義の終焉」という大きな波が迫りつつあります。

 過度な株主重視経営や行き過ぎたマネー経済、著しい格差の拡大などは、資本主義の末期的な現象だと言えるでしょう。

 そのような中で、多くの経営者やビジネスマンにとって「資本主義の次の世界がどうなるか」は大きな関心事にほかなりません。本書を読めば、それがわかるのではないか。そう期待して読み進めましたが、水野和夫氏は、「将来どうなるかはわからない」「絶対的な処方箋は存在しない」と言います。

 しかし、がっかりする必要はありません。「将来はこうなる」「こうすれば良くなる」といった断定的な言及はしていないものの、ホイジンガーの『中世の秋』やブルクハルトの『世界史的考察』といった歴史学の名著に触れながら、今後われわれが向かう世界について、多くの示唆を与えてくれているからです。

100年単位の変化を謙虚に語る

 例えば、中世から近代への移行期には、旧制度を維持したいグループと新たな制度への移行を進めたいグループとの間で壮絶なせめぎ合いがあったと言います。そのせめぎ合いは短期間のものではなく、およそ100年も続くことになりました。「長い16世紀」と呼ばれる時代です。

 そして、現在、われわれが経験している多くの混乱も、「歴史の移行期」がもたらす現象にほかなりません。であるなら、その混乱は短期的に終息するものではなく、100年単位のものになるかもしれないと考えるべきでしょう。水野氏は言います。

 「将来どうなるかはわかりません。しかし、歴史の移行期ゆえの混乱の時代が当面続くことだけは確かです」
 「従来の社会システムが崩壊しつつあるのは事実です。であるならば、私たちは変化し、新しい社会に適応して行かなければなりません」

 未来予測をうたった本が数多く刊行されていますが、本書ほど謙虚に、しかし、未来について多くの的確な示唆を与えてくれる本はないと言ってよいでしょう。

岡田光司(おかだ・こうじ)
東洋経済新報社出版局編集第1部長
1970年生まれ。主に、経済・金融、時事・トレンド分野の書籍を企画・編集。小宮一慶『「1秒!」で財務諸表を読む方法』、長谷川慶太郎『中国崩壊前夜』、水野和夫・川島博之『世界史の中の資本主義』などを担当。