これから中国ビジネスに携わる人だけでなく、すでに何年も携わっていて中国人とのコミュニケーションに難しさを感じている人にも手に取っていただきたい1冊です。きっとご自身の経験の整理ができると思います。過去の場面を思い出して、その場その場でとってきた対処法が、果たしてよかったのか、そうでなかったのか、考えながら読んでみてください。本書の中にその答えがあるはずです。

そんな私が「やられた!」の1冊
『中小企業が「海外で製品を売りたい」と思ったら最初に読む本』 大澤裕著、ダイヤモンド社
『中小企業が「海外で製品を売りたい」と思ったら最初に読む本』 大澤裕著、ダイヤモンド社

 日本国内だけでビジネスをやっていては将来の展望を描きにくいので、海外に活路を求めたい。そう考える企業、ビジネスパーソンに何か役立つ本を作れないか──。「アルク はたらく×英語シリーズ」の企画を考えるとき、いつもテーマの一つとしてあがってきます。海外企業との取引は国内ビジネスよりリスクがあり、ハードルが高い。社内には海外ビジネスのノウハウも乏しいため、なかなか行動に移せない。そうした状況を打開し、第一歩を踏み出すための企画を形にしたい、と常々考えていました。

 海外進出に関する情報・サービスは、主に公的機関が提供しています。そうした機関を利用するのも一つの手ですが、提供してくれる情報や支援が、必ずしも具体的、実践的でないケースがあるようです。民間のサービスを利用するにしても、とりあえず最低限の知識は事前に蓄えておきたいと考えるでしょう。

 そんな条件にぴったりはまるのが、この本です。誰に対して、何を提供する本なのかが、タイトルを見ただけでわかります。

海外進出でも英語に心配はいらない

 この本で最もいいと思うのは、英語について過剰に心配するなと言っている点。海外でもニーズがあると見込まれる製品や技術を持っていても、英語ができる人材がいないから、海外販売をあきらめている企業は少なくないようです。でも、「英語を完全にマスターしてから海外に乗り出す、という考えは捨てよう」というメッセージをストレートに打ち出しています。

 販路開拓のプロセスで、本当に英語力が必要なのは一部とのこと。必ずしも常に高い英語力が必要ではなく、ピンポイントに通訳者など外部の力を借りれば対応できます。また、英語の必要性に応じて社内体制を整えればいい、とも言っています。

 もう一つよいのは、海外販売を実現するために、実行すべきことを具体的、段階的に解説している点です。海外で自社製品を売る販売網を構築するため、販売パートナーを見つける、そのために展示会を活用する、海外で通用する資料を作る、契約を結ぶ、パートナーと良好な関係を築くなど、一つずつ丁寧に説明しています。基本的に、この説明に従って着実に準備を進めていけば、海外販売の実現が近づいてきそうです。

 この本の著者、大澤裕さんはご自身の起業、また他社のコンサルティングで海外販売の豊富な経験をお持ちになっています。この本からは日本の中小企業の海外進出支援に大澤さんの熱い思いを感じます。刊行予定を把握しているわけではありませんが、大澤さんの第2作が楽しみです。

海老沢久(えびさわ・ひさし)
ラジオたんぱ、香港中文大学(語学留学)を経て、アルク入社。これまで『日本語ジャーナル』『中国語ジャーナル』の月刊誌、『国際派就職事典』『海外で働く』の年度版ムックなどを担当。2015年から出版第3編集チームで、主にビジネスパーソン向けの書籍を企画・編集。