中国で中国人と仕事をするなら、中国語や日本語を使う場面のほうが多いでしょう。一方で、中国だけでなく、広くアジア地域に目を向けると、英語が重要になってきます。アジアでは、ビジネスパートナーやビジネスの折衝相手が中華系のビジネスパーソンというケースがよくあります。華僑であったり、現地で生まれ育った中華系の人たちです。

 中国大陸の中国人も、アジア地域の華人も、国・地域によって多少の違いはありますが、持っている価値観や行動様式は大きくは変わらないと思います。家族や仲間を大切にすることのほか、仕事に向き合う姿勢、会社への帰属意識など、多くの共通点があります。こうした価値観や仕事観、商習慣をあらかじめ理解しておくことは仕事に有効です。

 コミュニケーションに使うのが中国語であっても、英語であっても、中国人とうまく付き合うツボを心得ておくことは仕事にプラスに働きます。その意味で、英語を使って仕事をしている人にも読んでいただきたい本です。

乾杯攻撃はこれで防ぐ

 本の中身に触れる前に、私の体験を一つお話しします。20年くらい前のことですが、出張先の北京で、取引先の中国の出版社の幹部から昼食のお誘いを受けました。駆け出しの私を幹部自らが、なんと1対1の差しでもてなしてくれました。料理のことは忘れましたが、覚えているのはアルコール度数40度くらいの白酒をどんどん注いで、勧められたことです。私は真っ向勝負を挑みましたが、食事の最後のほうは座っているのがやっと。なんとか自力でタクシーに乗り込み、宿泊先に戻りましたが、翌朝まで起き上がれませんでした。

 中国の方々との宴会で乾杯攻撃に遭って撃沈した苦い経験はこのほかに何度もあります。中国や韓国の方々との宴会では徹底的に飲むしかなく、それが信頼関係を築く土台になる、と個人的には感じています。

 本書には、吉村さんがたくさんの宴会を経験する中で編み出した、乾杯攻撃に撃沈しないための対処法が載っています。具体的には「予防策」「防御策」「究極の対処策」に分けて、それぞれ三つずつ対策を挙げています。たとえば「防御策」では、(1)自分が徹底して注ぎ役に回る、(2)帰る時間をあらかじめ宣言しておき、飲む量を自分でコントロールする、(3)犠牲者を作る。つまりターゲットを選び、乾杯攻撃を仕かける側になる──。これらを知っていれば、宴会の翌朝、ひどい二日酔いに悩まされなくてすみそうです。

 宴会での乾杯に限らず、本書には中国の方々とよい関係を築き、仕事で結果を出すための実践的なノウハウが詰まっています。吉村さんは、数々の現場を経験されています。修羅場もたくさんくぐり抜けていて、そうした経験に基づく問題・課題への対処法のアドバイスが本書に凝縮されています。ご紹介した乾杯対策のように、対処法のアドバイスは吉村さん独自の工夫が施されていて、実践の場で効果を発揮するものと思います。

 この本は、仕事で中国と付き合う人が知っておきたいトピックを55のQ&Aにして、コンパクトに解説しています。扱っている範囲は、中国人とのコミュニケーション、贈り物や食事・お酒のマナー、中国社会の基本情報、出張・駐在で困らないための現地事情など多岐に渡っています。中国出張・駐在の機会がなくとも、仕事で中国人と接点がある人、職場に中国人の同僚がいる人にも役立てていただける内容です。

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