担当:海老沢久(えびさわ・ひさし)アルク出版編集部出版第3編集チーム
「日本人は中国人の本質を知らなさすぎる」
今から7年ほど前、当時弊社が発行していた中国語学習誌『中国語ジャーナル』のインタビューで、吉村章さんが開口一番、発したひと言です。それに続けて、以下のように言われました。
「中国人の商習慣や仕事の進め方をほんの少し理解しておくだけで、ビジネスをスムーズに進めることができるようになります。中国語でも英語でも、語学は一朝一夕には習得できません。それに比べて『異文化理解』は、数時間のセミナーに参加するだけでも、本を1冊読むだけでも、必要な知識やスキルを身に付けられるので、ぜひ学んでおくべきです」
たしかに、言葉ができることと異文化を理解することは別です。中国語の力がわずかに上がったとしても、それで仕事のパフォーマンスが劇的に向上することは期待しづらいものです。一方で、中国人とうまく付き合っていくためのノウハウを知っていれば、仕事をする上で大きな力になるでしょう。
語学を学ぶより文化を知れ
「語学学習ももちろん大切ですが、それ以上に異文化理解が重要です。日本人はもっと異文化理解に目を向けるべきです」。中国や台湾に赴任する日本人が、あまりにも現地の事情を理解していないことをさまざまな場面で知る中で、吉村さんはそう考えるようになったそうです。
吉村さんは1987年から10年間、台湾で働き、現在は台湾のコンピューターメーカー4500社で組織される業界団体の駐日代表という肩書きをお持ちです。台湾の団体ですが、2001年からは中国業務が加わったとのこと。日々取り組まれているのは、台湾などのIT関連情報の発信、台湾企業の日本市場開拓のサポート、日本・台湾・中国間のさまざまなアライアンスの支援など。また同時に、日本企業の中国進出支援、中国出張者・赴任者向けの異文化研修や地方自治体向けの海外市場開拓セミナーの講師を務めるなど、パワフルに活動されています。
今回ご紹介する『中国とビジネスをするための鉄則55』は、「アルク はたらく×英語シリーズ」の1冊です。私どもアルクは、語学の分野において出版物やアプリを出したり、研修を提供したりしています。これらのターゲットは英語を学ぶ人ですが、このシリーズでは、英語を学ぶ人ではなく、英語を仕事で使う人をターゲットにしました。
「使う」と言っても、社内公用語が英語の職場で働く人から、月1回くらいインターネットで英語による情報収集をする人まで、程度や頻度はさまざまです。具体的なターゲットは本ごとに変わりますが、英語を使って働く人に向けて、英語と一緒に身に付けておくと役立つ知識、技術をお届けするという趣旨で、これまでにシリーズで10冊ほどを出しました。冒頭の吉村さんの言葉にあった「異文化理解」も、このシリーズの趣旨に合うテーマであると感じ、約1年前に『中国とビジネスをするための鉄則55』のご執筆を依頼しました。
ところで、「中国なのになんで英語のシリーズから?」と思われるかもしれません。
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