『<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4309024327/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=n094f-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4309024327" target="_blank">消滅世界</a>』 村田沙耶香著、河出書房新社
消滅世界』 村田沙耶香著、河出書房新社
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 本書が描く、人工授精の技術が発達したもう一つの日本では、夫婦間のセックスは〈近親相姦〉とタブー視され、女性も、そして人工子宮を使って男性も、人工授精で子供を産みます。

 …こう書くと、極端なSF世界のように感じられるのですが、冒頭から読み進めていくと、なんともすんなりと、「こういうことって、近い将来起こり得る気がする」と思えてしまうのです。

夫婦が“しない”世界の不思議な現実味

 むしろ、現実世界で話題にのぼることの多い「少子化」「セックスレス」「不倫」「未婚率の増加」「恋愛しない若者たち」といった現象の根本にある人間の本音が、このパラレルワールドを通して透けて見えてくる気さえします。

 村田さんも、テレビなどで拝見すると「ほわわん」とした優しい雰囲気ですが、ペンを握れば、こんな世界を生み出される。そしてその文章は、中毒性アリです。

星野友里(ほしの・ゆり)
ミシマ社編集チーム所属。担当書籍は、三砂ちづる『女たちが、なにか、おかしい おせっかい宣言』、山本ふみこ『家のしごと』、大瀧純子『女、今日も仕事する』など。
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