新聞社はブラック職場?

本作に登場する新聞記者は毎日のように深夜まで働き、休日も取材に飛び回っています。主人公も働き方が原因で離婚しています。ワークライフバランスが重視されたり、電通社員の過労自殺が世間の批判を浴びたりという時代において新聞記者はどうあるべきなのでしょうか。

本城:これは「永遠の矛盾」だと思います。新聞社は長時間のサービス残業を社会問題として紙面で追及する立場にあります。でも現実的には記者自身も、過酷な立場で働いている。例えば、かつて読売巨人軍にいた松井秀喜氏は朝10時から練習します。松井番の記者が試合後に原稿を書き上げるのが夜中の1時ぐらい。つまり1日15時間働くことになります。取材相手に「私は8時間働いたからこれで失礼します」と試合前に帰る記者がいたら、信用してもらえませんよね。

 ただし、15時間ずっと緊張を強いられるわけではないから、工場の生産ラインで働く人と同じように論じることはできない。重要になるのは上司の存在でしょう。各記者の適性を踏まえつつ、業務負荷が大きい部署では頻繁に異動を行うとか、上司の配慮が一般の職場より求められます。それがないと簡単にブラック職場になります。

 僕自身は記者という仕事が好きで、退職した今でも記者たちが登場する小説を書き続けています。記者には現場で最初に真実を知るチャンスを与えられています。小説で新聞記者を描くときには、若い読者に「この仕事は面白そうだな」と感じてもらえるように意識しています。

ネット時代に紙の新聞はどう生き残っていくのかを問いかける作品になっています。本城さん自身は、情報収集において紙とウェブをどのように使い分けていますか。

本城:読む時間だけならウェブの方が多くなりつつあります。ただ、ウェブは自分の関心に沿って読むので、それ以外は目に入りにくい。一方で、新聞には自分の関心事もそうでないこともまとめて並んでいます。だから広告も含めて様々な情報が頭に飛び込んできます。そこが紙の新聞の良さだと思っています。

 紙の媒体はこれからも残るし、残すべきです。かつてある球団オーナーが球団数削減を求めた時、当時の古田敦也選手会長が「プロ野球の人気が落ちたと言っても、年間70試合近くの主催試合に最低でも1万人を集めるような娯楽はない」といった趣旨の発言をしました。武豊騎手も「有馬記念だけで10万人が集まるのですよ」と話していました。

 新聞の発行部数は落ちてきたものの、まだ4000万部以上あります。そこは各社が誇りに思っていい。誇りに思いつつも、今が最後の改革のチャンスと捉えなければなりません。新聞社は金儲けが下手でしたが、動画配信などこれまでにない挑戦も増えています。ここで踏み止まって変わらないと今まで読んでくれた人たちへの裏切りになります。

 私自身、これからも新聞記者が活躍する小説を書き続けますよ。