南:僕は小学校から大学までずっとサッカー部だったんですが、どうせやるならサークルじゃなくて部活がいいって思っていました。つまり、サークルの「楽しくやろうよ」っていうノリじゃなくて、やるからには真剣に、全力でっていうことです。だから起業も、サークルのノリじゃなくて部活です(笑)。リスクもみんなで取ろうということで、インターンを含めた全員が創業メンバーという意識をもってもらいました。
小山:『10%起業』では、自分の時間の10%を使ってほかの人が起業するのを助ける場合でも、見返りに「スウェット・エクイティ」と呼ばれる株をもらうという話が出てきます。まさにそれですね。
南:起業が部活だと思う3つ目の理由があって、起業ってやっぱり苦しいんですよ。そんなに簡単じゃない。

1975年福岡県生まれ。株式会社ブルームコンセプト代表取締役、名古屋商科大学ビジネススクール准教授。京都大学文学部哲学科美学美術史卒業。大手広告代理店勤務を経て、米国MBAを取得。卒業後、松竹株式会社にて新規事業を立ち上げる。2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立し、現職。
小山:なるほど、草ベンチャーって言っても、都市対抗野球に出るぞっていうぐらいの本気度じゃないとダメだと。
南:そうそう。逆に、起業家が草野球チームを作ると本気度がすごいという例もあって、僕の知り合いであるデザイン家電amadanaの社長の熊本浩志さんは、草野球チームを作ったときに「日本一になる」と宣言して、10年で本当に日本一になったんです。
小山:起業家の人たちの本気度はすごいですよね。毎週のようにトライアスロンの大会に出ている人もいますし。そもそも私と南さんが初めて会ったのはトライアスロンのチームでしたね。あのチームには経営者もたくさんいましたが、当時の南さんはまだ起業する前でした。
南:いろんな人に、「こんなビジネスをやりたいんだけど、どう思いますか」と話をしていた時期ですね。
小山:起業は苦しい、10回に9回は失敗するっていうのはわかるんですけど、一方でやってみたら意外と自分に向いていたということもあるのではないでしょうか。
南:あります。だから、ちょっとでも起業というものに興味があれば、やってみるべきだと僕は思います。チャレンジしてみて、ダメだったとしても、それはすごくいい経験になる。期限を切って、それまでに目標を達成できなかったらあきらめても、それは仕方がない。
手を動かさない“評論家”はチームにいらない
小山:部活と同じで、チャレンジした経験はいい思い出になるし、後々その人の財産になるわけですね。そのためにも期限を切ることが重要だということがわかりました。では、先ほどの話に戻って、役割分担についてもうちょっと聞いてもいいですか。少人数での役割分担というのは、やっぱりリーダーが割り振るものなんでしょうか。
南:おおまかに割り振ることはあっても、何をどうやるかはその人次第ですね。ベンチャーの立ち上げ期ってどこもそうだと思うんですが、5~6人のスモールチームだと、マネジメントは不要なんです。それぞれが自ら考えながら行動して、自分の役割を全うする。だから、人から言われたことしかできない受け身の人は向いていないんです。大きな会社だったら、助けてくれる先輩や同僚もいますが、ベンチャーはそうはいかない。自分の成果がすべて丸裸になってしまうような環境に耐えられない人は向いていないんです。
小山:自分で考えて動ける人しか適応できないというのはポイントですね。
南:“評論家”はいらないですよ、本当に。
小山:ああ、大きな組織にはいますよね、評論家みたいな人。口だけ出すけど自分の手は動かさないという……。スモールチームをつくるときに、人選はどうやったんですか? 南さんのリクルーティングにも興味があります。
南:仲のいい人同士でベンチャーを始めることもあるようですが、僕は自分の友人はいっさい誘いませんでした。
小山:え、そうなんですか?
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