南:小山さんが序文を書いた『10%起業』(パトリック・J・マクギニス著)を読みました。これ、そのまんまウチ(ビズリーチ)の創業の話ですね。
小山:そうなんですよ。いきなり会社をやめて起業するのってリスクが高いけれども、自分の時間の10%ぐらいを使って、自分の専門性を生かしながら起業しようというのが『10%起業』です。南さんは創業のとき、「草野球のように週末に集まってベンチャーをやるから草ベンチャーなんです」って言っていましたけど、まさにそれです。

1976年生まれ。株式会社ビズリーチ代表取締役。1999年、タフツ大学数量経済学部・国際関係学部の両学部を卒業後、モルガン・スタンレー証券に入社。2004年、楽天イーグルスの創業メンバーとなる。2007年、株式会社ビズリーチを設立し、2009年会員制転職サイト「ビズリーチ」を開設。(写真、菊池くらげ、以下同)
南:たしかに、ビズリーチは最初、ボランティアで手伝ってくれる人たちによって進められていきました。
小山:今、企業ではイノベーションのためにいろんな手法が試されていて、社内起業も盛んなんですけど、『10%起業』のように会社の枠組みを越えた取り組みっていうのはほとんどない。新しいことをやろうとしても、社内だけでやると今までの延長線上になってしまって、うまくいかないんです。
南:草ベンチャーの頃は、土曜日の朝10時に集まることにしていました。土曜日の朝10時から予定がある人はそんなに多くないんですよ。あるとしたら、草野球ぐらいです(笑)。そうやってビズリーチを起業したいきさつは、『ともに戦える「仲間」のつくり方』に書きました。
小山:土曜日の朝に集まるたびにプロジェクトがちゃんと進んでいたら、「お、これはすごいぞ」という雰囲気になり、ボランティアでもモチベーションが上がってきますよね。会社のような組織じゃない分、マネジメントには難しさがあったと思うんですけど、南さんはどういうリーダーシップをとったんですか?
南:本には書いていませんが、段々と土曜日の朝に来なくなった人も実際にはいました。ただ、そうやってフェードアウトしていく人は追いません。マネジメントとしては、「役割分担」と「期限を切ること」ですね。5~6人の少数のチームだから、役割がかぶっちゃまずいわけです。草野球でも、全員ピッチャーだったら試合ができない。期限を切るというのは、「この日までにこれができなければ、プロジェクトをやめよう」と決めることです。
10回中9回は失敗するから、期限を切る
小山:具体的にどれぐらいのスパンで期限を切っていたんですか?
南:まず、3カ月でベータ版を作る。それから3カ月で正式版をリリースする。そして正式版の開始から1年で投資家から資金を調達する。こんな感じでした。それぞれの期限で目標が達成できないなら、価値のあるサービスができないと思っていましたから。
小山:ある程度うまくいっていても、期限までに完成しなかったらやめる、っていうのは潔いですね。
南:スタートアップって、10回中9回は失敗するんですよ。だから、期限を決めないでずるずるやると、みんな疲弊してしまう。集中力をもたせるためには期限が大事です。中学校や高校だって、中間テストと期末テストがあって、3年間で卒業するという期限が切られたシステムだから、みんな勉強するわけです。
小山:10%起業や草ベンチャーだと、ボランティアで参加している分、目標をあやふやにしちゃうとチームとしてまとまらないんでしょうね。
南:だから、「部活」と同じです。部活って、期限が区切られているし、自分から部費を払って参加していますよね。それぐらいの気持ちがないと成り立たない。
小山:なるほど。ビズリーチの活発な社風って、外から見るとサークルみたいなノリかと思っていましたが、始まりは「部活」だったんですね。
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