今年の夏の参院選が迫ってきました。いろいろ争点はありますが、何と言っても選挙権年齢が「18歳以上」へと引き下げられることが大きい。各党とも若年層へのアピールを考えているようですが、これを機に本当に若い世代の政治参加が進むのか。今後の社会の変化を考えるうえでの重要なトピックです。
政治情報サイト「ポリタス」を運営するジャーナリストの津田大介さんと、若者代表として、1987年生まれの社会起業家の安部敏樹さんに語らっていただきたいと思います。
安部:よろしくお願いします。
津田:安部さんがやっている「リディラバ」っていう団体は、ソーシャルベンチャー界隈ではとても有名ですけど、日経ビジネスオンラインの読者にとっては、あんまりなじみがないかもしれませんね。
安部:そうなんですよ。悔しいですけど(苦笑)。僕たちは社会問題の現場に行く「スタディツアー」というのをやっていて、2014年には「観光庁長官賞」(若者旅行を応援する取組表彰)を受賞しました。翌年には、観光立国推進閣僚会議で決まった「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」で、スタディツアーが政策として盛り込まれたんです。

安部さんは、「KDDI∞Labo」や、「IVSローンチパッド」といった、通常のベンチャーが競う場でも、ソーシャルベンチャーでありながら優勝したり入賞したりしていますね。
安部:「社会起業なんて儲からないんでしょ」と言われて腹が立ったことがありまして。だったらビジネスとして成立することを証明してやろうと思って、そういったコンテストに出て、賞もたくさんいただきました。ソーシャルビジネスが、優秀な人を引き付けるような魅力的な仕事だということも示したかったんですよ。
津田:リディラバって、もともとは東大の学生団体から始まったんですよね。学内では伝説的な存在になっているし、僕も複数の大学で講義を持っているので大学生と話すことも多いんですが、社会への問題意識があったり、ちょっと変わった大学生はだいたいリディラバのこと知ってる印象があります。

安部:そういった活動もしつつ、4年前には、東大教養学部のゼミで教える側になって、それをまとめた本も昨年出版されました(『いつかリーダーになる君たちへ』)。そのゼミは、社会問題を解決するためのビジネスプランを学生にチームで作ってもらうという内容です。東大生って勉強はできるけど、チームで何かやるのは苦手。だから、体系的にチームビルディングを学んで、グループワークを通じて実践できるようなゼミにしました。
政治は「お金」と「電話」で動く?
本の話が出たところで、津田さんにおうかがいします。2012年に『ウェブで政治を動かす!』という本を出版されてから3年たちますが、最近のインターネットと政治の関わりをどう見ていますか?
津田:いやー、最近とみに思うのは、「政治は『ウェブ』じゃなくて、『お金』と『電話』で動いているなぁ」ということですね(笑)。
安部:(笑)。

一方で、「保育園落ちた、日本死ね!」という匿名ブログが国会を動かした例もあるのでは?
津田:もちろん、かつてと比べればずいぶん変わってきたなとは思います。匿名ブログで書かれたことが瞬間的に爆発して、国会で首相が「匿名である以上、本当のことなのか確認しようがない」と、問題の焦点がずれている答弁をしたためにさらに火がついて、国会前でのデモにもつながった。あれは数年前なら考えられなかった現象で、人々が政治的な主張を国会前デモというかたちで示すようになった背景には脱原発デモやSEALDsなどの存在があると思います。路上で声を挙げることのハードルが下がったんだろうと。
とはいえ、保育園落ちたブログ騒動で残念だったことが二つあるんです。一つは政府がそれに反応して出した「待機児童解消緊急対策」の中身。小規模保育所の規制を緩和して、預かれる子供の数を増やしている。保育士の待遇改善に予算をつけるんじゃなくて、保育の「質」を下げる方向にいってしまった。骨抜きもいいところで、これではウェブで政治が動いたように見えて、実質的にはぜんぜん「動いて」いないわけですね。
安部:メディアだと政治家の言動につい目がいきがちだけど、予算がどこについているかを見れば、実態は一目瞭然ですからね。この10年間、「少子化対策」っていう言葉はどの政治家のマニフェストにも書かれていたけれども、あまり進展していないですよね。何にどれだけ予算がつけられたのかを見れば、政治家の本気度がわかりますよ。
(※参考 内閣府の資料によると少子化対策関係予算は平成22年度ごろから3兆円台半ばであまり変わっていなかったが、ここ1~2年はようやく増加傾向にある)
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