英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)や「米国第一主義」を掲げるトランプ米大統領の誕生など、内向き志向を強める世界経済はどこに向かうのか。独自の視点でグローバル経済を論じてきた水野和夫・法政大教授が『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』を上梓した。500年続いた近代システムが、800年の資本主義の歴史とともに終わりを迎えつつあると主張する水野氏は、どんな先行きを見通しているのか。(聞き手は浅松和海)

タイトルにある「閉じてゆく」とはどういう意味でしょうか。

水野:世界の国々は産業革命や技術革新を経て、「より遠く」「より速く」というグローバリズムの動きを進めてきました。こうした動きに逆行し、ある一定規模の同盟という形に回帰したり、自国第一主義の方向に進んだりする動きを「閉じる」と呼んでいます。世界の流れは今、この「閉じる」方向に向かっています。

 グローバル化が進むと、例えばある特定の企業のパワーが大きくなり過ぎるなどの弊害が起こります。ペーパーカンパニーを作って税金を逃れるようなケースも出ています。欧州などでは増えすぎた移民に対し、国民の不満が募っています。これもグローバル化による弊害と言えるでしょう。

水野和夫(みずの・かずお)氏
1953年生まれ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストなどを経て、16年から現職。5月17日に『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』を発売。他の著書に『株式会社の終焉』『国貧論』など。(写真:都築雅人)

「閉じる」方向へ進んでいるのは世界全体でしょうか。

水野:昨年は英国がEUを離脱し、米国では自国第一主義を抱えるトランプ氏が大統領に選ばれました。どちらもグローバリズムの流れに逆行した、国を「閉じる」動きです。

米国が北朝鮮問題など外交面で積極性を強めています。これはグローバルな動きとも言えないでしょうか。

水野:確かに米国は外交面で積極性を強めている部分もありますが、外交政策については継続性があり、いきなりやめられるものではありません。ただ、司法と争っている入国禁止令などはひるまずにやっています。外交面では難しくても、内政面でできるところでは自国第一主義を進めている状況です。

 日本などから見ればおかしい政策という気もしますが、米国ではヒスパニック系の人口が増え、遠からず多数派になると見られています。入国禁止令に賛成する白人層などは、そうした現状に危機感をおぼえているのだと思います。グローバル化を進めた結果、金融やビジネスの面では、米国は世界を支配してきました。ただ、人の面では逆に「乗っ取られ」そうになっているのが現状なんです。