中小企業の経営者にもっとチャンスを
労働者を守るために労働基準監督官の大幅増員、地方産業の集約を進めるために新陳代謝が進む環境の整備、といった指摘が本書に出てきます。中小企業にとってかなり厳しい話です。
厳しいのはむしろ現状です。地方の企業や中小企業・小規模事業者にとって、本当に厳しい経営環境とは過当競争です。上手くいっている事業なら集約する必要はありませんが、儲からない、もしくは赤字続きの事業であっても、なかなか手を引けない。事業を整理しにくい環境にあるために頑張らざるを得ないことが、過当競争に拍車をかけ、経営者を苦しめています。
経営者の方には儲からない事業から良い意味で簡単に手を引いて、儲かりそうな新事業など他の新しい活躍の場に転身し、大いに活躍をしていただきたいのです。そしてもっと経営力を高めてもらい、成功する経営者がどんどん生まれて欲しいと願っています。それが働く場を増やすことにもつながります。
書き残したテーマはありますか。
重要なテーマとして、雇用の外にある労働の改革があります。建設や土木、運送といった業種において深刻な労働力不足とそれに伴う過重労働の問題が起きています。今後の成長分野として期待されているICT(情報通信技術)の業種も人材が足りません。これらの職種に従事する人々は個人事業主として仕事を請け負っており、企業に雇用されていない場合があります。
ところが個人事業主とはいうものの、実態としては、正味の収入は最低賃金を下回り、被用者保険に加入できない厳しい労働環境で、指揮命令を受け、雇用者のように働くことを余儀なくされている人たちがおられます。多様な働き方を支援する勉強会は今後、この辺りを議論していきます。
この問題も構造的です。発注者を含めたシステム全体の問題ですから。発注の方法や契約にまで踏み込んで対策を講じる必要があると考えています。
それから、生活困窮者の自立支援について別の私的勉強会をつくって勉強を進めています。こちらもまた大きなシステムの問題です。労働改革とも関係しますが、生活保護と更生保護のために、色々なセーフティネットと自立支援策を用意しなければなりません。
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