渡辺:理解するのに英文法の勉強、必要ないですね(笑)。でも、それが「気取っていない」「庶民感覚がある」と受け止められるんです。

小田嶋:自称大富豪でも。面白いですね。日本からアメリカの政治を見ている俺みたいな半可通インテリというか、亜インテリの立場からしてみると、半ば勉強としてウオッチングしているわけだから、アメリカの大統領にはできれば格調高い演説をしてほしいわけです。

渡辺:いや、私だって大統領には格調高い演説をしてほしいですよ(笑)。

小田嶋:だからオバマさんを大いに贔屓にしていて、「就任演説、見事だな」と思って翻訳を見て、原文を見に行って、ああ、すばらしい、と。オバマさんがポイントポイントで何か言うたびに一応、ウェブで確認にいって、ああ、なるほどと。

渡辺:本当に、あの演説は「英語を勉強しよう」という気持ちにさせられるんですよね。トランプだと「ああ、英語って勉強しなくても大丈夫かも」という感じになる。

小田嶋:その昔、’70sのロックミュージックを聴いていたころに好きな歌を訳してみたのと同じ感覚で、オバマの演説をいわばファンとして見ていた。だからそうなるとトランプは、全部聴き取れるのみならず、格調なんか薬にしたくてもありゃしないという。

渡辺:ないですよ、格調は全然ないですよ。記者会見で気に入らない質問をする記者がいたら、「ビー・クワイエット(黙れ)!」、「シットダウン!(座れ!)」ですから。

安倍首相、見事に得点す

小田嶋:そうですよね。記者に「お前らはうそばっかり言っている」とケンカを売って、記者の方もわりとひどいというか、異例な質問をしていて、すごいですよね。

渡辺:すごいですよ。両方とも喧嘩腰ですよ。

小田嶋:ああいう人にもろに乗っかった安倍さんは大丈夫なのか。

渡辺:あ、いや、首脳会談は私、安倍さんにとっては大成功だったと思いますよ。アメリカのメディアは、過剰な接待で浪費したトランプに対しては批判的でしたが、その批判は安倍さんには向かわなかった。あの長い握手の後に「やれやれ。やっと開放されたぞ」という感じの表情をした動画が流通したのがラッキーでした。

小田嶋:19秒でしたっけ、ずーっとトランプに手を握られていた。

渡辺:安倍さんが救われたのはあれですよ。「かわいそうに、手を人質にされて」と、あれで同情票が。

小田嶋:なるほど。「ガキ大将にとっつかまったか、かわいそうに」という感じかな。マッチョの握手でしたよね。

渡辺:あれは「お前、俺のものになれ」という握手ですね。それと「これは俺の女だ」みたいなアピールをするジェスチャー。彼は、そういうことをずっとやってきた人なんです。