話が少し飛びますが、トランプ氏が、報道はされていないけれども、日本や安倍晋三首相について発言したり、コメントしたりしているということはあるのでしょうか。

ウォルフ:全く聞いたことはありません。というより、トランプ氏にはそもそもそんな関心がない。彼には世界がどうなっているのかという関心がない。

 「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」というのは、彼の世界を見る視点というよりは、ある意味、世界を見る視点を持ち合わせていないということを覆い隠すための方便です。彼にとっては、世界がどうなっているかなどということはどうでもいい話です。外交政策にも関心がないし、とにかく何も知らない。これまでの人生で、もう少し物事を知らなければまずいとか、知る責務があるなどと考えたことが恐らく全くない人間です。

そうであれば、トランプ氏は中国の習近平国家主席のことはどう見ているのでしょう。バノン氏は中国との関係こそがトランプ政権の要だとしていたようですが…。

 彼はバノンの目を通して中国を見ていた、という感じです。中国との貿易関係は問題だという意識はあるが、昨年4月に米フロリダ州にある自分の別荘「マール・ア・ラーゴ」で習近平氏らを迎えた時、中国側はトランプに会って、あまりに彼が何も知らないため、同じレベルでは会話ができないと感じたようです。

トランプ氏による司法妨害が中間選挙最大の論点になる

米大統領選挙でロシアと協力したのではないかという疑惑の解明を進めるモラー特別検察官による捜査は今後、どう進展していくと思いますか。

ウォルフ:モラー氏は、少なくともトランプが(コミーFBI長官を昨年5月に解任したことは)司法妨害に当たるという趣旨の報告書を連邦議会に提出するでしょう。11月の中間選挙前の6月か、遅くても7月には出すでしょう。その時点で、トランプの司法妨害が中間選挙の最大の論点になる。

 その意味で11月の中間選挙は、トランプ政権のその後を決める重要な選挙となる。もし民主党が下院で過半数の議席を抑えることになれば、議会はほぼ確実にトランプの弾劾に動くことになるでしょう。

この本の中でバノン氏は、今後のトランプ政権の行方について、それぞれ3分の1の確率で「弾劾される」「合衆国憲法修正第25条の適用によって解任される(注*3)」「任期を全うする」と指摘しています。ウォルフさんは弾劾になる可能性が高いとみているということですか。

(注*3)憲法修正25条第4節は大統領が職務上の権限と義務を遂行できないと副大統領と15人の閣僚の8人が判断し、上院議長と下院議長に申し立てすれば事実上解任できると規定している。だが、これが適用された前例はない

ウォルフ:これらは同時に進む可能性もあります。少なくとも弾劾制度を使って辞めさせるには、ご存じのように上院が「有罪だと宣告する」ところまで持って行く必要がある。これはなかなかハードルが高い(注*4)。弾劾されて、有罪宣告される前に辞任するというケースはあり得ます(注*5)

(注*4)米国の弾劾制度は、下院の過半数による決議で始まり、上院の3分の2以上が有罪と判断することが必要。つまり上院議員100人の67人以上の賛同が必要だが、現在は共和党が51人、民主党が47人、独立系が2人議席を握っているので、3分の2以上が有罪と判定するかは微妙だ。11月の中間選挙で改選対象となる上院の議席数の3分の1(今回は34議席)で民主党が圧勝しても有罪判決に持ち込むのは容易ではないだろうとされる。ちなみにビル・クリントン大統領は、下院による訴追決議の後、上院で弾劾裁判の審議で無罪判決となった

(注*5)ウォータゲート事件の解明を妨害したニクソン大統領は1974年、下院の司法委員会が訴追勧告を決定、この勧告に従い下院が訴追決議をする直前に辞任したため、弾劾裁判は開かれなかった

 しかし、本に書きましたがバノン氏の指摘で重要なのは、トランプが2期目をやる可能性はゼロで、2期目に立候補する可能性もゼロに近いとしている部分でしょう。私もそうみています。

わかりました。今年の中間選挙の行方、そしてトランプ氏に認知症の兆しがあるのではないかとの指摘があることなどについて、引き続きお聞かせください。

 

■変更履歴
記事中に「使えるにはトランプは最悪の人物」との箇所がありましたが、正しくは「仕えるにはトランプは最悪の人物」でした。また、「マティス攻防長官」は「マティス国防長官」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は修正済みです。 [2018/03/06 10:30]

 

次回に続く)