いつ頃、本を書くことを考え始めたのですか。

ウォルフ:大統領選が終わって、トランプがホワイトハウスに移る前、つまり、政権移行期間中の2016年12月上旬です。トランプに「(政権の)オブザーバー(観察者)」としてホワイトハウスに行きたいと話したら、彼は私が政権スタッフ入りしたいのだと誤解したようでした。ホワイトハウスの仕事を何も知らなかった彼は「次席観察補佐官」みたいな職があるのかと思ったという反応でした。なので、「違います。私は本を書きたいと考えています」と言った。すると、そんな話には全く関心を示さなかった。しかし、「だめだ」とも言わなかった。「ああ、そうなんだ」みたいな感じで…。

 ですから私は「次期大統領は、私が本を書くためにホワイトハウスに取材に行くのはOKということだな」と理解したわけです。そして、それを根拠にそこからホワイトハウス関係者への取材の申し込みを始めて、文字通り翌年1月から7カ月間、ホワイトハウスで取材を続けました(注*2)

(注*2)2017年7月28日に、トランプ大統領がプリーバス首席補佐官を更迭し、同日に国土安全保障長官を務めていたケリー氏を首席補佐官に据えて以降、ホワイトハウスの管理が厳しくなり、ウォルフ氏の取材も打ち切りとなった

大統領就任前とはいえ、簡単にトランプ氏に会えたのか

「本を書く」ことについては、直接トランプ氏に会って聞いたということですか。

ウォルフ:そうです。

そして、そのことをあなたのエイジェンシーに伝えたらその場で、本にして出版する話がまとまった、と本に書いていらっしゃいますね。

マイケル・ウォルフがルパード・マードック氏の人生について書いた書籍『The Man Who Owns the News

ウォルフ:そうです。私のエイジェンシーを務めるワイリー(注*3)とは20年近い長いつきあいです。私が2005年にルパート・マードックについて書いた本もワイリーを通して出版しました。実は当時、私はワイリーと別の本を出す話を既にしていました。しかし、「ホワイトハウスに入って取材をさせてもらえそうだ。新政権の様子を取材できるのだから本が書けそうだ」と提案したら「それは、おもしろい!」とその場で出版が決まりました。

(注*3)欧米では作家や著述家は、日本とは異なり直接出版社と交渉するのではなく、自分のエイジェンシーと協力しながら本を作り上げ、その上でどの出版社から出すかを決めるケースが多いという。ワイリーはノーベル文学賞受賞の作家を数人抱えるなど、欧米ではトップクラスの作家エイジェンシーとして知られる

ちなみに、トランプタワーでトランプ氏に直接、ホワイトハウスで取材したいと依頼したとのことですが、大統領就任前とはいえトランプ氏とは簡単に会えるものなのですか。

ウォルフ:比較的簡単でした。というのも私はバノン(トランプ大統領の首席戦略官・上級顧問を務めていたが、2017年8月18日に更迭され退任)がトランプ陣営に加わった2016年夏以降、かなりの時間を彼とともに過ごしていました。それにバノンに最初にインタビューをしたのも私でした。ちなみにその取材は、彼がホワイトハウスを去る前の唯一のオンレコの取材でした。そんなこともあり、この本を書く構想をバノンに相談したところ、彼がトランプに直接会って相談すべきだと言って、アポを設定してくれたのです。

 私は大統領選中の2016年5月、トランプに彼のビバリーヒルズの自宅で取材(注*4)もしていて関係はよかった。当選のお祝いの言葉も伝えたかったので、会話はスムーズに進みました。

(注*4)この時のインタビューは、米誌「Hollywood Reporter」の6月1日号に掲載された