米英豪が、AUKUS(オーカス)の枠組みの下でオーストラリアに原子力潜水艦を配備する計画を発表した。中国がアジア支配に乗り出すのを座視しないという重要な決意表明と言える。多くの重要技術分野で先行する中国に対抗するには、西側同盟国は協力し合う必要がある。
オーストラリアと英国の海軍兵士は、何十年も前から米国の潜水艦内を訪れてきた。この3カ国は、これ以上は考えられないほど緊密な同盟関係で結ばれている。
だが、その英豪の兵士でさえ、機関室の防水扉をくぐって中に入ることはできなかった。その扉の先には、米国の最高機密技術の一つ、原子力機関があるからだ。この技術は、1958年に英国に供与されたただ一度を除き、他国に提供されたことはない。
米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」は、その扉を開け放った。これは、西側と中国との競争が新たな段階に向かうことを示す出来事だ。
アンソニー・アルバニージー豪首相、ジョー・バイデン米大統領、リシ・スナク英首相の3カ国首脳は3月13日、そろって新たな計画を発表した。英国がオーストラリアと共同で、次世代の原子力潜水艦を設計・建造する。
一番艦の就役は2040年代になる。それまでのつなぎとして、20年代は、米国と英国がオーストラリア西部のパースに原潜部隊を巡回配備する。30年代には米国がオーストラリアに現世代のバージニア級原潜を最大5隻、売却する。いずれも前例のない措置だ。
この計画には多くのリスクが伴う。オーストラリアは財政的に莫大な負担を負う。米国は現在でも、自国海軍のために十分な数の原潜を建造するのに苦労している。しかも、少なくとも20年かかるこの計画は、政治状況や予算が今後変化しても3カ国すべてにおいて維持されなければならない。

だが、その部分が重要なのだ。意見を一致させた3人の指導者は、自らと後継者たちを、一つの長期的な方針に縛り付けたことになる。その方針とは、中国がアジア支配に乗り出すのを黙って見過ごしはしない、というものだ。
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