新型コロナ禍やその後のエネルギー価格の上昇、ドル高などで、多くの発展途上国が債務問題に直面している。今や先進国のみならず、中国など西側諸国以外も途上国の債権者となっているため、債務整理は容易ではない。国際的な債務再編の枠組みが必要だ。さもないと、債権国は資金の一部回収すら難しくなってしまうだろう。

 新型コロナウイルス禍のさなかに起こった3年間の数々のショックは、低・中所得の発展途上国に大きな打撃を与えた。その被害はすでに発生したものにとどまらず、未来においても待ち受けている。

 世界の最貧国層の多くが「失われた10年」の危機にさらされている。人道的な大惨事であり、甚大な道義的失敗と言えるだろう。それは我々を含む世界の全ての人々に関わることだ。とりわけ、最悪の打撃を受けたいくつかの国々に近接する欧州の人々の未来に、大きな影響を与えるだろう。

 まずすべきことは、顕在化した債務危機に対処することだ。

 国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事によると、「低所得国の約15%がすでに過剰債務状態で、さらに45%が過剰債務に陥るという、極めて高いリスクを抱えている。新興市場国では約25%の国々がデフォルトしてもおかしくない借入金利にさらされている」という。

 スリランカ、ガーナ、ザンビアはすでにデフォルトに陥っている。さらに多くの国の予備軍がいる。早急に手を打つ必要がある。

スリランカは債務膨張や資源高が原因となり、2022年デフォルトに陥った(写真=AP/アフロ)
スリランカは債務膨張や資源高が原因となり、2022年デフォルトに陥った(写真=AP/アフロ)

 なぜこのような事態になったのか? 原因は、低・中所得国が誤った形で債務を抱え込み過ぎたことにある。これは、まっとうな代替手段がなかった故の結果だ。リスクが高いにもかかわらず借り入れ条件を魅力的に設定したことが「債務のわな」に道を開く結果となった。そこに新型コロナ拡大、エネルギーと食料の価格高騰、金利上昇、ドル高、世界的な景気減速が重なった。債務返済にかかるコストは法外なものとなり、脆弱な国々は債務のわなにはまってしまっている。

 負債を支払えなくなれば、債務の再編が必要になる。企業や家計だけでなく国家も同じだ。ところが、中南米債務危機(1982年)があった80年代以降、債務再編はむしろ困難になっている。

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