ドローンのように電動ローターで空を飛び乗客を運ぶ「eVTOL」専用ターミナルが、パリで試験運用を開始した。空飛ぶタクシーと呼ばれるeVTOLはヘリコプターより静かで運航コストも安い。自動操縦も視野に入る。運営会社は、2024年のパリ・オリンピックの場において、選手村と空港などを結ぶ航路で運航したいとしている。

ボロコプターは先陣争いで先頭を走る(写真=ロイター)
ボロコプターは先陣争いで先頭を走る(写真=ロイター)

 フランス・パリの中心部から40kmほど北西にある地方空港、ポントワーズ=コルメイユ空港の朝もやが徐々に晴れていく。そろそろ同空港の「バーティポート」にチェックインする時間だ。

 バーティポートとは、空飛ぶタクシー、あるいは空飛ぶクルマとも呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸機)のための新種のエアターミナルだ。航空業界がバーティポートと名付けた。

 eVTOLは、ヘリコプターのように垂直(バーティカル)に離着陸する。しかし、機体を飛ばす力を生むのはジェットエンジンではなく、ドローンのように電気で回転する複数のローターだ。

 11月10日、ポントワーズ=コルメイユ空港にこのバーティポートが開設された。とはいえ、まだ試験運用にすぎない。欧州で最初のバーティポートであるため、行き先となる別の施設が存在しないからだ。

 しかし、ポントワーズ=コルメイユ空港を含め、パリ地域の空港を運営する仏パリ空港公団(ADP)は、この状況が変わる日は遠くないと考えている。パリでは2024年7月にオリンピックが開催される。同社は、それまでにパリ周辺で少なくとも2つの飛行ルートの運航を開始する計画だ。10機のeVTOLを使い、各機体を1時間に2~3回飛ばす。選手村と既存の空港、そしてパリの南、イッシー=レ=ムリノーにある救急医療センター近くのヘリポートを結ぶルートになるだろうという。

静かで小さく、待ち時間15分

 ターミナル自体は、中規模の集合住宅程度のコンパクトな造りだ。乗客はチケットをスマホのアプリで購入するので、チェックインはペーパーレスで簡単に済む。顔認証で本人確認をし、床のセンサーが体重を量る。このデータを基に、建物のすぐ脇に停機したeVTOLが重量を計算し、飛行に必要な電力と充電のタイミングを判断する。

 コーヒーを一服する間もなく搭乗し、ラッシュアワーの渋滞を眼下に眺めながら20分かからずにパリの中心部を飛び越える。

 この施設を整備した英スカイポーツのダンカン・ウォーカーCEO(最高経営責任者)は、何も問題がなければ乗客がターミナルで10~15分以上待つことはないと語る。

 ここで使われているeVTOLは、独ボロコプター製だ。スカイポーツは同様のバーティポートを米カリフォルニア州マリーナにも開設している。そちらの施設は、やはりeVTOLを開発する米ジョビー・アビエーションが使用する。スカイポーツは、ロンドンやシンガポールなど他の場所でもバーティポートを計画中だ。

 バーティポートは土地に余裕のない都市部に設置されるため、できる限り小さく造らなければならない。そのため、普通の空港のように、乗客にターミナルでゆっくり過ごしてもらうわけにはいかないのだ。

 従来の空港やヘリポートとの違いがもう一つある。静かなことだ。eVTOLが頭上を通り過ぎた時の音は、少し前に空港の中央ビル近くに着陸したヘリコプターよりもはるかに小さかった。ウォーカーCEOは「市の中心部で問題なく運航するためには、飛行音を抑える必要がある」と語る。