トランプ前米大統領が対中関税を強化した時、世界のサプライチェーンはアフリカや中南米にシフトすると思われた。だが貿易を拡大したのは東南・南アジアの国々だった。米中欧とも、この地域との貿易割合を増やしている。だが米国が輸入するアジア製品の部品は中国製。アジア諸国が米中の仲介貿易の役割を担っていると見られる。

ASEAN豪NZ貿易圏首脳会議でも、東南アジア諸国の発言力が強まっている(写真=AP/アフロ)
ASEAN豪NZ貿易圏首脳会議でも、東南アジア諸国の発言力が強まっている(写真=AP/アフロ)

 世界の貿易網は、疫病、不況、米中関係の悪化と、立て続けに打撃に見舞われてきた。今、最も新しい脅威は、またしても世界的景気後退が見えてきたことだ。世界経済が新型コロナウイルス感染症により停滞してからまだ2年だというのに、海運会社の経営者らは、国際貿易の見通しは暗くなると再び警告を発している。

 しかし、国際貿易にはこうした景気循環の影響よりも深い部分で変化が生じている。企業が生産体制の見直しを始めているのだ。そして政府もそれを後押している。

 2018年に米国のドナルド・トランプ大統領(当時)が中国からの輸入品に初めて追加関税を課した時点では、このような貿易の変化は考えられなかった。しかしその後、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が世界を襲い、米国のジョー・バイデン大統領は半導体先端技術の中国への移転を禁止した。さらに、米国内での製造業への投資に数千億ドルの補助金を提供しようとしている。

 以前では考えられなかった、世界の貿易体制の再編が、避けられないものとなっている。そして、新たな世界貿易の勢力図が、少しずつ形を表し始めている。

 世界のモノの貿易は、20年に新型コロナによる影響で低迷した後、力強く回復した。21年の世界全体のGDP(国内総生産)に占める貿易額の割合は、14年以来の高水準となっている。

東南・南アジアからの輸入増

 しかし、すべての貿易ルートが好調なわけではない。トランプ氏が保護主義へとかじを切った時、アフリカや中南米の国々は、中国向け取引の一部が流れるではないかと期待した。だが、貿易関係の変化で最も恩恵を得たのは、アジアの国々だった。

 国際貿易のデータは、出そろうまで時間がかかる。そのため、現状を把握する最も良い方法は経済先進国の輸入データの数字を見ることだ。11月3日に公表された米国のデータによると、米国の輸入総額は18年以降、30%以上増加している。しかし、輸入相手国ごとの増加率はまちまちだ。中国からのモノの輸入額は4年前から6%しか増えていない。トランプ氏が中国に貿易戦争を仕掛けて以降、中国製品の市場シェアは大幅に縮小している。

 EU(欧州連合)からの輸入額も伸びず、18年からわずか12%増だ。友好国との供給網を再構築する「フレンドショアリング」は進んでいるかもしれないが、規模はそれほど大きくない。カナダとメキシコからの輸入は、それぞれ39%、34%増だった。

 過去4年間で最も米国向け輸出を増やしたのは東南・南アジアの国々だ。バングラデシュとタイは、18年以降、米国への輸出を80%以上伸ばした。ベトナムは170%以上だ(下グラフ参照)。インドとインドネシアも60%以上増加した。

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