準備済みだった中印シフト
ロシアのウクライナ侵攻に対する西側の反応は、ロスネフチに大きな打撃を与えた。石油価格の高騰で、同社は最近、記録的な年間配当を出すことができた。しかし、禁輸措置により欧州の買い手は絞られた。2月以降のロシアの石油生産の落ち込みの大半はロスネフチの減産によるものだ。
かつてロスネフチにすり寄ってきた石油各社が、今は同社を排斥する。英石油大手BPはロスネフチの株式の20%近くを保有していたが、すべて売却した。米エクソンモービルは、ロシアの極東地域で進む石油・天然ガス合弁プロジェクト「サハリン1」から撤退しようとしている。
西側の石油トレーダーはかつて、ロスネフチが出荷する貴重な原油を勝ち取るために「小競り合い」があると話していた。そのトレーダー各社との関係も崩れた。資源商社大手トラフィグラは7月13日、ロスネフチがツンドラ地帯で進める巨大プロジェクト「ボストーク・オイル」への出資分10%を引き揚げると発表した。セチン氏は、新開発するこの油田で、ロシアを数十年間支えられると考えている。
西側からの排斥は、目立たないところでも影響を及ぼした。ロシアの多くの油田は開発から年数がたち、採掘が厳しくなっている。そのため適切なコストで原油を搾り出すには高度な技術が必要だ。だが、米シュルンベルジェなど、これまで強いつながりがあった西側の油田専門会社がロシアから撤退。ロスネフチの非ロシア人の取締役や上級幹部も、制裁を恐れて大急ぎで会社から離れていった。このため、専門的な知識が失われてしまった。
しかし、セチン氏はこうした事態を予見していたのかもしれない。
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