ロシア国営石油会社ロスネフチは、西側が科す制裁措置により欧米市場と技術、資金面の支援を失った。しかしイーゴリ・セチンCEOはかねて中国・インド企業と関係を深め、欧米依存からの脱却を図ってきた。世界のエネルギー供給網は、西と東の2つのブロックに割れてしまうのだろうか。

セチンCEO(右)はプーチン大統領の側近。その目は東を向く(写真=ロイター/アフロ)
セチンCEO(右)はプーチン大統領の側近。その目は東を向く(写真=ロイター/アフロ)

 ロシア国営の石油大手ロスネフチのCEO(最高経営責任者)、イーゴリ・セチン氏は、風刺画にしやすい人物だ。がっしりとした体格で髪を短く刈り、余暇にはソーセージづくりを楽しむ。噂では自分で仕留めたシカの肉を使うらしい。

 セチン氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が深く信頼する腹心の一人だ。2014年にロシアがクリミア半島を併合して以降、同氏の名前は米国のブラックリストに載っている。22年のウクライナ侵攻後は、欧州連合(EU)も同氏を制裁対象に加えた。

 しかし、セチン氏はただのオリガルヒ(新興財閥)ではない。EUは同氏を「ロシアの政治エリートの中でも指折りの有力者」と見なす。ロスネフチ一筋でキャリアを積んだ経営者として、ロシア国家予算の約45%を占める石油・天然ガス産業をしっかりと支えてきた。

 セチン氏は、地政学的状況にも鼻が利く。そのおかげでロスネフチは、プーチン大統領の独裁的で無謀な政策を支えてくることができた。だからこそ、西側の石油会社がロシアから撤退する中で、セチン氏らがどう対応するか、目を向けておく価値がある。

 ロスネフチにとり、欧米市場での取引は難しくなった。条件の厳しい地域における油田や天然ガス田の開発を支えてきた欧米の投資や専門技術も失った。一方、セチン氏がかねて主導してきた中国・インドの好調な市場への転換戦略が実った面もある。

 この状況がどう展開するかにより、今後、世界の石油供給網が2つの対立するブロックに割れるかどうかが決まっていくだろう。

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