米トランプ前政権の貿易戦争を受け継いだバイデン政権の対中経済政策の全貌がようやく明らかになりつつある。トランプ関税の行方に注目が集まるが、同盟国との連携や、国内産業への投資に対する目配りも重要なポイントだ。だが、バイデン政権の中国に対する経済戦略は、どうやらトランプ政策の「微修正」にすぎない内容となりそうだ。

米国政治で意見が1つにまとまることはめったにないといわれている。だが対中政策は「めったにない事例」の一つになると言えるだろう。台頭する中国に対して何か手を打たねばならないという点については、ほとんどの人が同意する。だが、事が具体的に何をすべきかに及ぶと、なかなか合意に至らない。とりわけ経済分野での対策をめぐっては、分断と混乱さえもが生じている。
米国企業に対して開かれた中国市場にするのが最終目的なのか、それとも中国とのビジネス自体の解消を目指すのか。米国のジョー・バイデン政権では、こうした相反する意見がぶつかり合い、法案の審議がなかなか進まない。同政権はまひしていると批判の声が上がるほどだ。最近では、中国に対する関税を撤廃するか否かについて、終わりの見えない議論を続けている。優柔不断の極みと言える事例である。
関税は品目ごとの見直しか
しかし、バイデン政権の対中経済政策の輪郭は、徐々に見え始めている。この議論が決着して首尾一貫した戦略が打ち出されるのか、それとも矛盾が解消されない泥沼にはまり込むのか、これから数週間で明らかになりそうだ。
政策のコンセプトははっきりしている。米国のアントニー・ブリンケン国務長官は5月に、バイデン政権の対中政策を「投資、連携、競争」という3つのキーワードにまとめた。米国は今後、自国産業の強化のために投資をし、同盟諸国とより緊密に連携し、必要な場合には中国と対峙すべきだ、と考えたのである。
この3つの言葉は、バイデン政権が中国経済にどのように対処しようとしているかを理解する上で、実に分かりやすい分類だ。
競争政策から見ていこう。ドナルド・トランプ前政権下の米中関係は、競争が全面的に押し出されていた。トランプ大統領(当時)は、中国に関わりたいと長らく考えていた米国人の心を引き離し、対抗心を強引に引き出した。米ピーターソン国際経済研究所のチャド・バウン氏の計算によると、中国製品にかけられた輸入関税はもともと平均3%程度だったが、トランプ政権の終了時には20%近くに上昇していた(上グラフ参照)。バイデン氏が取り組まなければならない当面の課題は、この「負の遺産」への向き合い方を決めることである。
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