ロシアがウクライナに侵攻する前、ポーランドとEU欧州委員会は、司法への行政介入などを巡り対立していた。しかしウクライナの戦争でポーランドは大きな役割を果たし、両者の関係は改善してきた。とはいえ、現政権が変わらない限り、ポーランドがEUの主要国になることはなさそうだ。

ポーランド政界で実権を握るPiSのカチンスキ党首(写真=AFP/アフロ)
ポーランド政界で実権を握るPiSのカチンスキ党首(写真=AFP/アフロ)

 1月下旬、欧州全土でエネルギー価格が急騰する中、ポーランドでは立腹する消費者に向け、「悪いのはEU(欧州連合)だ」と、おなじみの言い訳が流布された。この宣伝に努めていたのは国有の電力・ガス会社だ。値上げの原因の少なくとも6割はEUの環境政策にあると訴えた。

 この主張は、控えめに言ってもひどい誇張だ。だが、とにかく、数週間後にロシアがウクライナに侵攻し、エネルギー価格がさらに跳ね上がると、EUへのこの批判はひそかに取り下げられ、非難の矛先は、もっと恐ろしい者に向け変えられた。あおり文句は「プーチンフレーション」だ。

 ポーランドは長年、EUの中央ともめてきた。EUの執行機関である欧州委員会は一部の加盟国の後押しを受け、ポーランドが自由・民主主義の規範を軽視していると強く非難する。ポーランドでは、政治家が裁判官を任免し、同性愛者をたたき、報道の自由を制限しているという。また、中絶制限についても厳しく批判してきた。ポーランドは、レイプや母体の生命に危険が及ぶなど例外的な場合を除き、中絶を禁止している。

 EUからのこうした批判は、保守的で国家主義的な現政権をいら立たせてきた。現与党「法と正義(PiS)」は、15年から政権の座にある。PiSは、伝統を守るポーランド国民に対してEUが「政治的に正しい」見解を押し付けようとしていると非難する。

 PiSの幹部は、EUをかつての大君主国ソビエト連邦になぞらえ、EU法をポーランドに適用しなければならないのかと疑問を提起してきた。欧州委員会はこれに対し、ポーランドへの補助金拠出を一部制限した。

 しかしそれも過去の話だ。実際に欧州を揺るがす戦争が始まると、EU域内の雰囲気は和らぎ、敵対的な振る舞いは抑えられている。欧州委員会は6月、ポーランドに対して保留していた350億ユーロ(約5兆円)の資金提供をまもなく開始すると発表した。これは新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)からの復興に用いる資金として用意した7500億ユーロ(約104兆円)の一部で、ほかの加盟国は既に利用している。

 欧州委員会がこの資金提供を凍結したのは、PiSが裁判所を都合よく操作して司法を損なっていると疑ったためだ(PiS側は、裏から操られた利己的な司法を国に従わせる必要があったとしている)。このEU資金は、ゆがめられた司法制度の多くが元に戻されたと、EUの財務関係者が判断した時点で提供することになっていた。しかし、これまでにポーランド政府が実施した修正は、ほぼ見せかけにすぎないとの批判もある。

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