早期停戦か、ロシアに報いを受けさせるか──。ウクライナでの戦争の終わらせ方をめぐり西側が割れている。ドイツ、フランス、イタリアは和平派、ポーランド、バルト3国、英国などが強硬派だが、米国は曖昧な姿勢を示す。根底には戦況の見通しが不透明で、ウクライナとロシア、双方ともに勝利の可能性を捨てていない現状がある。

停戦交渉をめぐる西側諸国の立場には温度差がある(写真=新華社/アフロ)
停戦交渉をめぐる西側諸国の立場には温度差がある(写真=新華社/アフロ)

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「戦争で勝利するには戦争で勝つしかないが、戦争を終えるには交渉を通じて実現するしかない」と語った。

 戦闘をいつやめるべきか、どんな条件でやめるべきか。それはウクライナが決めることだと西側陣営は言う。しかし、戦争の開始から3カ月が経過し、西側諸国は戦争の終わらせ方について、それぞれの立場を明確にし始めている。

 ブルガリアの首都ソフィアにあるシンクタンク、リベラル戦略センターのイワン・クラステフ氏は、西側は大きく2派に分かれると説明する。一つは、極力早く戦闘を停止し、交渉を始めることを望む「和平派」。もう一つは、軍事侵攻を行ったロシアには多大な代償を支払わせるべきと考える「強硬派」だ。

 まず問題になるのは領土だ。これまでに占領された地域をロシアのものとするのか。2月24日の侵攻開始時点の境界線に戻すのか。それともさらに、国際的に認められた国境まで押し戻して、2014年に占領された地域の回復を図るのか。

 ほかにも論点はいくつもある。中でも大きなものが、戦争が長期化した場合の損害とリスク、メリットの有無についてだ。今後の欧州でのロシアの位置づけも議論されている。

 和平派は行動に出始めている。ドイツは停戦を呼びかけた。イタリアは政治的調停に向け、4項目からなる計画を提案している。フランスは、ロシアに「屈辱」を与えない形で和平合意をまとめる必要性を語る。

 これに反対する立場を表明しているのが、主にポーランドとバルト3国。そして筆頭に立つのが英国だ。

慎重に立ち位置を探る米国

 では米国はどうか。ウクライナにとり最も重要な後ろ盾である米国は、いまだ立場を明確にしていない。ただ、ウクライナが強い交渉力を持てるよう支援するだけだ。米国はこれまでに140億ドル(約1兆8000億円)近くをこの戦争に注ぎ込んできた。米国議会は400億ドルの追加支出を決めたところだ。また、米国の呼びかけで40カ国以上が軍事的支援に応じている。しかし、支援にも限りがある。米国はこれまでりゅう弾砲などを供与してきたが、ウクライナが求める長距離ロケットシステムは提供していない。

 米国の立場が曖昧な点は、ロイド・オースティン米国防長官の発言を見るとより一層際立つ。オースティン長官は4月のキーウ(キエフ)訪問後、西側はウクライナの「勝利」とロシアの「弱体化」に向けて支援すべきだと述べ、強硬派の立場を支持した。ところが3週間後、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相との電話会談後は「即時停戦」を呼びかけ、和平派に近寄る姿勢を見せた。米国防総省は方針に変更はないと強調する。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2085文字 / 全文3365文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「世界鳥瞰」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。