リモートワークの拡大で、従業員の仕事ぶりを監視するシステムを導入する企業が増えている。監視技術が急速に進化する一方、法整備は始まったばかりで規制が追い付かない。仕事ぶりの監視に有用な側面があることは確かだが、労働者保護のための基準作りが望まれる。

従業員の働きぶりを監視する動きが拡大している(写真=アフロ)
従業員の働きぶりを監視する動きが拡大している(写真=アフロ)

 労働者の仕事ぶりを監視する行為は、昨日今日始まった話ではない。18世紀英国の極悪非道な工場では監視役がムチを振るっていた。小売店が監視カメラで客や従業員を見張るようになってからも久しい。工場や倉庫で働く作業員が、トイレ休憩の時間まで決められるという屈辱を味わわされた例もある。

 今、オフィスで快適に仕事をしている人も、自分がどれほど監視されているかを知れば驚くかもしれない。

 電話やメールはソフトウエアで監視されている。そのためのソフトは進化を続けている。人工知能(AI)による詮索は新たな水準に達しつつある。Zoom会議中の口の開き方、落ち着きのないキーボードのたたき方、いらつき続ける声の調子など、あらゆる兆候からその人の生産性を評価し、心の状態まで判断しようとする。

 監視システムを導入する企業は増えている。従業員に自宅で仕事をさせるようになった雇用主は、リモートで働く労働者から目を離したくないのだ。米調査会社ガートナーによると、監視ソフトを利用する大企業は、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)前は10社に1社ほどだった。それが、3年以内に70%に達すると予想される。

 経営者が自由に利用できるデータは増え続けている。IT(情報技術)機器を利用する業務において監視できる範囲が拡大しているのだ。「グーグル・ワークスペース」「マイクロソフト・チームズ」「スラック」などのソフトが広く利用され、部下が何時から仕事を始めたか、プラットフォームを利用した会議に何回参加したかなどを上司は把握できる。

 従業員証にはモーションセンサーとマイクが装着され、だらだらしていると上司に気付かれる。職場と家庭の線引きが曖昧になっているため、ウェブカメラを含め、プライバシーを侵害しやすい監視ツールが、労働者の私生活やソーシャルメディアのアカウント、個人的に利用する機器に四六時中目を光らせている。

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