フィンランドとスウェーデンが近くNATOへの加盟を申請する見込みだ。しかし、正式加盟までの集団安全保障が適用されない期間に加盟国からどのような支援を受けられるかが問題になる。ロシアを挑発することなく抑止力を働かせるバランスのとれた対応が求められる。

フィンランドのサンナ・マリン首相(左)。訪日し、5月11日に岸田文雄首相と会談した(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
フィンランドのサンナ・マリン首相(左)。訪日し、5月11日に岸田文雄首相と会談した(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 4月29日、ロシアの軍用機がスウェーデンの領空内に短時間侵入した。この領空侵犯は、スウェーデンと隣国フィンランドが北大西洋条約機構(NATO)への加盟を検討していることに対する露骨な警告と受け止められた。

 ロシアは、この北欧2カ国がNATOに加盟申請したなら「適切な対応を必要とする深刻な軍事的、政治的結果を招く」と繰り返し警告してきた。そうした事態に至る可能性は日に日に高まっている。

 スウェーデンとフィンランドにとり、NATOへの加盟は、北大西洋条約第5条、すなわち「1つの加盟国への攻撃を全加盟国への攻撃とみなして対応する」ことを定めた集団安全保障条項の適用を受けることを意味する。しかし、両国が特に懸念するのは、加盟国として正式に認められるまでの集団安全保障が適用されない期間についてだ。

 そのため、加盟申請に向け一歩先んじるフィンランド国内での議論は、もっぱら、この危険な期間にNATOおよびその加盟国30カ国からどのような支援を受けられるかという点に集中している。正式加盟が認められるまで何カ月も、場合によっては1年以上かかるかもしれないのだ。

 欧州のある外交官は、「NATO加盟は(ロシアを)強く刺激することになる」と指摘した。

 今のところフィンランドでもスウェーデンでも、ロシアとの軍事衝突の可能性が高いと予想する見方はほとんどない。しかし両国とも、非軍事的な手段の組み合わせによる様々なハイブリッド攻撃やサイバー攻撃に対して既に準備を整えている。

NATO加盟国は両にらみの対応

 ロシアがウクライナに侵攻して以後の激動の2カ月の間に、両国民がNATO加盟国に期待する支援の内容も変化した。侵攻は欧州の安全保障秩序を揺り動かし、非同盟を貫いてきた北欧2カ国もその姿勢を考え直さざるを得なくなったのだ。

 議論の焦点はもはや安全保障ではなく、申請後に米英やNATO自体などから得られる援助や明確な支援宣言に移っている。

 フィンランドの野党第1党「国民連合」の外交政策顧問を務めるヘンリ・バンハネン氏は、正式加盟が認められるまで「第5条による安全保障が得られないことは誰もが理解している。(しかし)だからといって、ほかの方法で地域の安全保障を改善できないということはない」と述べ、「政治的な宣言、情報交換や、バルト海での演習など防衛面での協同活動を増やすことなどができる」と取り得る方法を列挙した。

 フィンランドの政府関係者は、これまでにロシアがもっと多くの挑発行為をしてこなかったことがむしろ不思議だと話す。フィンランドにNATO加盟申請を断念させる可能性を生むためには、ロシア政府は迅速に動かなければならないはずだからだ。

 フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領は、5月12日までに声明を発表すると約束した。その後、政府は間をおかずに加盟申請をするものとみられている。これに対してロシアは、バルト海沿岸の飛び地カリーニングラードへの核兵器配備を示唆した。しかし、リトアニアによると、2018年に既に配備済みの可能性があるという。