韓国の文在寅大統領は公約を一つも果たしていないが、退任時の支持率が歴代大統領の中で最も高くなりそうだ。他の先進国よりも新型コロナにうまく対処し、医療崩壊を起こさず死者も抑えられた点が国民に支持されている。国民のワークライフバランス改革、民主主義の強化なども手掛けたが、平等主義の実現までには至らなかった。

文在寅大統領の任期は残り2カ月となった(写真=AP/アフロ)
文在寅大統領の任期は残り2カ月となった(写真=AP/アフロ)

 退任を間近に控えた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は就任当初、高い目標を掲げていた。だがそのほとんどについて結果を残せていない。

 文氏は2017年5月、朴槿恵(パク・クネ)前大統領が収賄と職権乱用の容疑で収監された後、すぐに実施された大統領選挙で当選した。朴氏や信頼を失った政治家たちに対する抗議運動が何カ月も続く中、彼は選挙戦を通じて社会と政治と経済の革新を基本政策として訴えた。

 政治と大企業の癒着に終止符を打ち、平等主義的な経済を創造すると公約。自然豊かな郊外にある大統領執務室をソウル市の中心部に移転することや、常に市民と対話すること、私的金融取引や党派を超えた争いをやめさせることも約束した。また、北朝鮮の独裁者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記に提案を行い、朝鮮半島に平和な時代をもたらすとも語っていた。

 だが文氏は今もソウル北方の山麓にある大統領官邸に引きこもる。収賄罪などが確定していた朴前大統領に恩赦を与え、贈賄側であるサムスングループの後継者、李在鎔(イ・ジェヨン)氏も仮釈放した。ほかの財閥の経営トップに対しても、引き続き彼らの企業が韓国経済の中心となることを保証した。一般国民は重すぎる住居費用に苦労し、若者は相変わらず就職難で苦しんでいる。党派間の言い争いや中傷合戦はやまないどころか、次期大統領の選挙戦は罵り合いばかりが目に付く。また、北朝鮮はミサイルや核弾頭の保有数を拡大し、韓国との軍事境界線近くにある南北共同連絡事務所を爆破した。

 しかし、文氏がどのような大統領として記憶されるかという話になると、これらは重要ではなくなるかもしれない。韓国は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)をほかの先進国よりも比較的うまく切り抜けたが、それには文政権の功績も大きい。

 文氏の在任期間は映画や音楽などの韓国コンテンツが世界中に大きく広まった時期と重なる。加えて、それほど目立たないが、文氏はまだ成熟しきっていなかった韓国の民主主義を強化し、国民生活のストレスを多少軽くする施策にも着手した。

 こうしたことから、文氏は韓国が民主主義国家となって以降、退任時の支持率が最も高い大統領となりそうなのだ。世論調査の種類にもよるが、与党の支持率が3割程度であるにもかかわらず、有権者の4割から5割弱が文氏を支持している。

結果を残したコロナ対策

 韓国は、今でこそオミクロン株による感染急増に苦しんでいるが、経済協力開発機構(OECD)に加盟する先進国中、人口に対して確認された感染死者数の比率が2番目に低い(ニュージーランドに次ぐ)。パンデミックが始まって2年、韓国国民はロックダウンに耐える必要もなく、医療崩壊を経験したこともない。